アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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2020-02-17から1日間の記事一覧

村上春樹論・まとめ――『風の歌を聴け』から『ねじまき鳥クロニクル』まで アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹論・まとめ――『風の歌を聴け』から『ねじまき鳥クロニクル』まで2012-12-11 15:14:25テーマ:文学と思想 1.デビュー作『風の歌を聴け』には読み方が二つあります。ひとつは、従来の村上の読者たちがしてきたような、主人公である「僕」の友人「鼠…

村上春樹と60年代「後」 アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹と60年代「後」2012-12-08 13:05:34テーマ:歴史と文学 ・ 意外と注目されていないのが初期の村上に見られるスタンス、時代との間合いの取り方です。初期に『風の歌を聴け』と並んで『中国行きのスローボート』と云う短編集があるのですが、在日の中…

『30年代の危機と哲学』 アリアドネ・アーカイブスより

『30年代の危機と哲学』2012-12-06 16:46:45テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/51BPNVJT8VL._SL500_AA300_.jpg ・ 20世紀を代表する、ハイデガーの『ドイツ的大学の自己主張』『なぜわれらは田舎に留まるのか?』、フッサール『ヨー…

デュラス『木立の中の日々』 アリアドネ・アーカイブスより

デュラス『木立の中の日々』2012-12-03 15:09:29テーマ:文学と思想 http://pds.exblog.jp/pds/1/200912/09/12/c0077412_1063683.jpg 何十年前も前に読んだのに何時とは思いだせない。その時のことが思い出せない。初版のあとがきがあるので、たぶん1967年頃…

村上春樹『ねじまき鳥』クロニクル・第三部 アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹『ねじまき鳥』クロニクル・第三部2012-12-02 16:16:35テーマ:文学と思想 ・ なにかで村上春樹が「全体小説」と語っているらしいと聞いた。本作を読んで、その意味が少し解るような気がした。全体小説、総合小説と云ってもいいのだが、通常はバルザ…

『モデラート・カンタービレ』 デュラス、自らを語る アリアドネ・アーカイブスより

『モデラート・カンタービレ』 デュラス、自らを語る2012-12-01 12:56:38テーマ:映画と演劇 デュラス:「わたしはそれを、『モデラート・カンタービレ』で外側から語った」(『語る女たち』1974) ・ 『モデラート・カンタービレ』とは、つまり、中ぐらいの…

映像と言語の間 『雨のしのび逢い』と『モデラート・カンタビーレ』 アリアドネ・アーカイブスより

映像と言語の間 『雨のしのび逢い』と『モデラート・カンタビーレ』2012-11-30 21:12:10テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/51E1DMWQ7ZL._SL500_AA300_.jpg ・ 雨が降らないのに『雨のしのび逢い』。公然と、投げやりのようなけだる…

『ねじまき鳥クロニクル』とはどういう小説か? 村上春樹への期待 アリアドネ・アーカイブスより

『ねじまき鳥クロニクル』とはどういう小説か? 村上春樹への期待2012-11-30 10:51:13テーマ:文学と思想 ・ 本作を読んで最初に感じるのは、文体の変化である。 文体の変化は、村上小説の主人公の設定、人物造形の輪郭を変える。妻が失踪したこと、それと前…

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第一部・第二部を読む アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』第一部・第二部を読む2012-11-30 00:08:52テーマ:文学と思想 http://yoshibook.com/blog/photo/2006-08-16.jpg ・ 主人公は村上の他の作品にも出て来る離婚歴の中年男である。村上が多彩にして多様な文体を駆使する巧みな…

ふたつの戦後イタリア映画についてなど アリアドネ・アーカイブスより

ふたつの戦後イタリア映画についてなど2012-11-28 12:24:29テーマ:映画と演劇 http://ec2.images-amazon.com/images/I/51PX2FNTY2L._SL500_AA300_.jpghttp://ecx.images-amazon.com/images/I/21XAF56K9AL._AA160_.jpg ・ たまたま戦後の古いイタリア映画を…

村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と言葉の感受性・下 アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と言葉の感受性・下2012-11-28 11:03:52テーマ:文学と思想 http://ec1.images-amazon.com/images/P/4101001359.09._SCMZZZZZZZ_.jpg 同様に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の主…

村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と言葉の感受性・上 アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』と言葉の感受性・上2012-11-27 15:30:33テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/511WD5D924L._SL500_AA300_.jpg ・ この小説は村上春樹の四番目の長編小説とされている。デビュ…

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』と男性本位の思想 アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』と男性本位の思想2012-11-25 13:37:18テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/2146WGSMTPL._SL500_AA300_.jpg・ ダンス・ダンス・ダンス、とは、死の舞踏という意味だと思う。村上春樹の六番目の纏ま…

村松剛『三島由紀夫の世界』 アリアドネ・アーカイブスより

村松剛『三島由紀夫の世界』2012-11-22 14:56:50テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/51SnMQBKc4L._SL500_AA300_.jpg ・ 浩瀚なと云う形容が相応しい書物である。単なる文学研究ではなく、生前親しくしていた友人ならではのエピソード…

村上春樹の初期の作品について アリアドネ・アーカイブスより

村上春樹の初期の作品について2012-11-19 13:29:30テーマ:文学と思想 ・ 村上春樹についての関心は二つあります。一つは村上春樹現象とでも云うべきもの、二つ目は村上の評価軸の賛否の両側において、肝心なところが誤読されていると云う不思議な現状、です…

橋本治『浄瑠璃を読もう』を読もう アリアドネ・アーカイブスより

橋本治『浄瑠璃を読もう』を読もう2012-11-18 23:49:06テーマ:文学と思想 ・ 最初に橋本治の『浄瑠璃を読もう』がなぜ『文楽を読もう』ではないのかについて書いておこう。浄瑠璃と文楽の違いは、上方では浄瑠璃と云い、関東では文楽と云うと云うように理解…

ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』 アリアドネ・アーカイブスより

ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』2012-11-17 22:51:17テーマ:映画と演劇 http://ec2.images-amazon.com/images/I/51lNUHkuiWL._SL500_AA300_.jpg ・ マイルス・デーヴィスの音楽、そして夜の町を彷徨するジャンヌ・モローの情感を欠いた無機的な映像、…

歌舞伎と文楽の新参者 アリアドネ・アーカイブスより

歌舞伎と文楽の新参者2012-11-17 12:37:21テーマ:音楽と歌劇 http://www.shinchosha.co.jp/images/book_xl/406113.jpg http://mw2.google.com/mw-panoramio/photos/medium/5667084.jpg ・ どう云うものか人には好き嫌いと云うものがって、同じ古典芸能でも…

国民文学と云う選択肢 アリアドネ・アーカイブスより

国民文学と云う選択肢2012-11-14 23:24:31テーマ:文学と思想 ・ 先日村上春樹のノーベル賞受賞云々が議論された時、今年が一番可能性としては高いだろうな、と思った。受賞を逸した時、日本の現状のためにいただきたかったと云う失望観と、それでも文学とは…

『羊をめぐる冒険』を読む・下 アリアドネ・アーカイブスより

『羊をめぐる冒険』を読む・下2012-11-12 22:58:57テーマ:文学と思想 「羊」とは、何の寓意なのだろうか。 先記の川本三郎は、60年代を熱く覆った青年たちを捉えたイデオロギーではないかと推察し、加藤典洋もまたそれに賛意を表明している。どうしてもこ…

『羊をめぐる冒険』を読む・上 アリアドネ・アーカイブスより

『羊をめぐる冒険』を読む・上2012-11-12 22:57:13テーマ:文学と思想 http://ec2.images-amazon.com/images/I/41Ux6j1gKTL._SL500_AA300_.jpg ・ このところ少し丹念に村上春樹の初期の作品を読んだ。そこで感じたのは、デビュー作『風の歌を聴け』とそれ以…

ヴィスコンティ『若者のすべて』と『家族の肖像』アリアドネ・アーカイブスより

ヴィスコンティ『若者のすべて』と『家族の肖像』2012-11-08 10:48:00テーマ:映画と演劇 http://www.cafebleu.net/movie/visconti/cinema/rocco.jpg ・ 原題は、「ロッコと彼の兄弟たち」、イタリアではロッコとは有名な聖人であるらしいから、聖性に関する…

『グレン・グールドをめぐる32章』 アリアドネ・アーカイブスより

『グレン・グールドをめぐる32章』2012-11-07 10:14:12テーマ:音楽と歌劇 http://moviepad.img.jugem.jp/20090625_603338.jpg ・ グレン・グールドについては熱心なファンと云う訳ではなく、断続的に聴いている。ある日、何の予備知識もなく聴いた彼のゴ…

文楽「鬼一法眼三略巻」より――”異化”なるものとしての演劇形式 アリアドネ・アーカイブスより

文楽「鬼一法眼三略巻」より――”異化”なるものとしての演劇形式2012-11-05 13:10:11テーマ:映画と演劇 ・ 文楽の粗筋と云うと、歌舞伎と同様に簡単に説明しようとすると難しい。むかし源氏に仕えていた吉岡家には鬼一法眼、鬼二郎、鬼三郎と云う兄弟がいて、…

初期村上春樹作品に見る聖性 アリアドネ・アーカイブスより

初期村上春樹作品に見る聖性2012-11-05 01:16:53テーマ:文学と思想 ・ 村上春樹の初期の作品に『納屋を焼く』と云う短編があります、納屋を焼くのが趣味だと云う半ばホラー半ば妄想じみた男が出て来るのですが、小説の中では実際に男がそう言うだけで彼の異…

『ノルウェイの森』と遠藤周作『沈黙』――ある60年代の戦前・戦間・戦後 アリアドネ・アーカイブスより

『ノルウェイの森』と遠藤周作『沈黙』――ある60年代の戦前・戦間・戦後2012-11-04 08:24:58テーマ:文学と思想 村上春樹の文学を論じようとして感じる困惑感は彼の文学に対してではない。何かタブーのように“王様は裸である”と主張しえない目に見えない管…