アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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映画 『わが母の記』アリアドネ・アーカイブスより

映画 『わが母の記
2012-05-22 16:19:11
テーマ:映画と演劇

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 古い博多の繁華街、中洲大洋に久し振りに出かけました。
 映画館の全景です。こうした内容の映画なのですから、昔の名残を残した映画館で見ることの方が相応しく感じます。

 


 映画は、作家井上靖の、生い立ちゆえに長年距離感を払拭出来なかった母親を、その介護通じて和解に至る、と云う物語である。映画の見方は井上文学のファンが作品の延長線上に見ても良いし、最近の介護物語のひとつと見ても良い。映像は美しく、音楽も素敵で、俳優たちも芸達者だから何れの見方であっても、よい。
 私は『しろばんば』の大ファンであるから、訪ねてみたいと思っていた伊豆・湯ヶ島や沼津の海岸の風景が、見たこともないのに懐かしいのであった。
 主役の一人、役所宏司の、如何にも日本のお父さんと云う、たしか昭和三十年代まではいたと思われる父親像を演じて、実に良い。自らが母の愛を受けることに於いて過少であったがゆえに、子供たちに対しては過保護であらざるを得ない、井上の悲しさが浮き彫りにされていて感心した。
 樹木希林は、こうした感傷的な映画ではありがちな過剰な思い入れを排して、淡々と呆け老人を演じている。宮崎あおいの生真面目さも良い。お勧めの映画と云える。

 

 


 映画館の暗闇になじんだ目に、春の水面(みおも)に映える空や、新緑の緑がまぶしいくて眼の奥から涙が滲みました。