途切れ行く光りの中で・・・モネの睡蓮 アリアドネ・アーカイブスより
途切れ行く光りの中で・・・モネの睡蓮
2012-09-05 15:34:11
テーマ:絵画と建築
・日本語の「睡蓮」とは素晴らしい言葉ですね。
けだるくもの憂げで眠たくなるような水面の澱み、仄かな色彩、そして消えゆく光の陰・・・とくれば、モネの『睡蓮』の世界!まるでモネは日本語の語感を知っていたかのような最晩年の関心のありようです。
ひたすら睡蓮だけを描き続けました。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/77/Monet_Waterlilypond_1926.jpg
睡蓮 1920頃 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
・ クロード・モネへの関心は、移ろいゆくものへの関心と、普通の家庭人としての彼の人生観と共存していたと云う、不思議な事実ですね。実際に、彼は長生きしすぎたので、あの『日傘の女』等に描かれた、夫人や小さな子供にも先だたれてしまいました。あるいは、生前からそうした予感が彼の内にあって、それがあれほどの輝かしい至福感をカンバスの上に映し得た彼の不思議な感性のあり方の証なのだと密かに想像するのです。
それにしても親しい人に全て先立たれるとはどんな心境だろうか。人間たちが退場した後の、無人の世界の中で、長年世界を支えた自然ですらも、後退する光の陰りの中で、物の輪郭が崩れて、死と薄明の中に溶解して行く、死の静寂が持つ世界、刻一刻と迫る臨場感あふれるドキュメントのようでもある、単なる人である事の死ではない、技びととしてのクロード・モネの世界の終焉。
クロード・モネ、生涯の大傑作!仰ぎ見る、生きてあることへの時間への賛歌!
あれから半世紀に近い時間が流れ去ったのです・・・。
日傘を差す女(モネ夫人)1875 ナショナル・ギャラリー(ワシントン)