アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

アリアドネ会修道院附属図書館・アネックス一号館 本館はこちら→ https://ameblo.jp/03200516-0813  検索はhttps://www.yahoo.co.jp/が良好です。

思い出の三角形ーー東急トライアングル切符 アリアドネ・アーカイブスより

思い出の三角形ーー東急トライアングル切符
2019-06-21 20:29:03
テーマ:わたしの住んでいる町

東急トライアングル切符とは渋谷、自由が丘、二子玉川の、主要三ヶ所を繋ぐフリーチケットである。それぞれ東横線大井町線田園都市線の一部を利用している。
東京を去ろうとするいま、東急各線がそれぞれに懐かしい。
東京との付き合いは、最初に長女が借りていた大倉山のアパートから始まる。渋谷を出た東横線の車両は最初の代官山と多摩川沿いの田園調布の丘陵を除けば鬱蒼と樹木が茂った山に出会う。もちろん山といっても標高はさしてないのだが。こんもりとした森の林相と開発を免れた自然公園の感じが山を思わせるのである。山の頂上には帝冠様式というのか、国家議事堂を髣髴とさせる文化財建築が聳えている。元々は民家の篤志家の志しを受けたある種の精神哲学を標榜する研究所であったということだが、いまは横浜市に移管されて各種の文化活動に利用されている。東京との出会いが公園のような町との出会いであったことは幸せであった。
このあとたまに、あるいはしばしば上京する東京での暮らしは次女と長男の上京に伴って市が尾や武蔵新城に広がり田園都市線南武線を利用するようになった。そのあと次男の上京もあり、長女と長男の二度の引越しで、学芸大前、中目黒、石川台は東雪谷、大岡山と、姉弟四人が多摩川を隔てたほとんど10キロ四方に住むことになった。この間、転居に応じて池上線、大井町線目黒線を通して南北線にまで拡がった。
経緯を辿れば思い出は尽きない東急各線とそれに付随する各路線ではあるが、ある日を境にある家族の肖像も時の変遷と変質を受け遂には終わりとなる。思い出は尽きないがゆえに生活の中心にあった不整形の三角形、思えばその内側で全ては経過したのだと思うと偶然の付合も懐かしく反時計回りに一巡した。
最初に自由が丘の路地裏を何回かミズスマシのようにぐるぐると回る。渋谷の一つ手前に代官山では旧朝倉邸を参観して夏木立の静寂を愉しむ。渋谷ではあまり親しむことがなかった道玄坂からロフトのあたりの路地と坂道を歩いて昔の記憶と繋いでみる。二子玉川は近年様変わりして一変したと言ってもいいけど、最後はここの隠れ家のような裏通りのフレンチでささやかな祝盃を挙げることで閲した歳月を祝うことが出来た、