7月のベスト10――(6位~10位)
6位から10位までは下記の通りです。
6位のアメリカ児童文学、7位にランクインの樋口一葉の問題作『にごりえ』、純文学であると同時に児童文学でもあると云う側面を持ちますが、知名度の高さ、多く読まれているにしては本格的な研究となると、今一歩の感があります。特に一葉の文学においては、子供世界の固有性という観点を持ち込んでこそ初めて一葉の本質を理解しうる、と言うのが私の年来よりの持論なのです。
8位の法王の砦「ベニスコラ」は、私のスペイン旅行の旅の記録です。このころはコロナ禍でまさか海外旅行が1年後、これほども遠くなるだろうとは予想もしないことでした。この時期にスペインを見れたこと、よかったと思います。
私の拙い旅の記録を読んでいただいて皆様ありがとうございます。
それにしても9位のゲーテの『親和力』!
大文豪の古典にして最大の問題作がこういう位置にずっとあるというのがとても私にはミステリアスです。日本人の性愛感や道徳観念を突き放すような先鋭的な古典がこの位置!とてもとても素敵です。日本人がんばれ!と言いたいです。ゲーテは手強いですぞぉ!!!
彼に先行し、ほぼ同じ時代を生きたもう一人のビッグネイム、ウィリアム・シェイクスピアがこの辺りの位置に出てくると面白いと思います。シェイクスピア文学の幅の広さ、深さは、人生そのものよりもある意味で広く深いのです。彼の文学の一端に触れることなく生涯を終える人の人生など私には想像することが困難です。彼が与えてくれる豊かさ、温かさ、そして残酷さと深遠さ、それに触れないで人生を終えていいのですか?――そう思います。
10位の吉本流名に関するエセー、昨今の読書会の書評欄にはほとんど出てこない昭和の硬派文学!こういうものがベスト10に顔を出していることは、一葉やローラ・インガルス、ゲーテの文学などとともにこのブログの誇りとするところです。
最後に、今回は少し時間がありますので私のことを少し皆様に語っておきますね。
このままいけば私の文学の徒然は知られることもなく消滅することでしょう。私が学んだこと、それは評価されることもなく結局無意味だったのか、そういう疑問に私とて無関心でいるわけではありません。沢山の方に読まれ、評価され、人と人との繋がりが広がっていけばよいと思いますし、素晴らしことだとも思います。しかし人の運命とは偶然のか細い糸にぶら下がっているようなもので、ほんの気まぐれで死んだり蘇ったりするのです。
むしろ昨今の私は発想を変えて、軽視され、顧みられなくありつつ世界文学の伝統が、彷徨い、行き場を失い、仮の宿りとして私の肉体を数年選んだ、という風に考えているのです。私は貧しいけれども、世界理性の賓客をお迎えし、かりそめの庇を差し奥へと誘いお招きしている旅籠の亭主なのです。文学や芸術は確かに永遠であり不滅ではありますが人の手の温もりを遮断されると十全には呼吸できないという不思議な理があるからです。
台所と居室が一間で、壁を隔てた隣室は馬小屋であるという設えですが、私の命が尽きるまで、この賓客を雨風から守るべく、1日1日を日延べしながら、1日でも長くと願いつつ、生きながらえている旅のしがない亭主、それが私です。
6位
https://ameblo.jp/03200516-0813/entry-12505537586.html
児童文学に見るニューイングランド気質――『若草物語』と『大草原の小さな家』シリーズ
7位
https://ameblo.jp/03200516-0813/entry-12505542621.html
一葉『にごりえ』
8位
https://ameblo.jp/03200516-0813/entry-12539788444.html
ベニスコラ、法王の砦にて スペインの旅 28
9位
https://ameblo.jp/03200516-0813/entry-12505539231.html
ゲーテ『親和力』
10位
https://ameblo.jp/03200516-0813/entry-12505534969.html