アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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西洋舞台演劇史素描・1 アリアドネ・アーカイブスより

西洋舞台演劇史素描・1

2011-08-01 22:15:53

テーマ:映画と演劇

西洋舞台演劇史素描

――博多座からヨーロッパ演劇の始原的空間誕生の“現場”へ――

 

  

‐目  次‐

1.はじめに

2・古典古代期のギリシア的演劇空間の誕生

3.コーンウォールの中世イギリスの円形舞台から野外劇へ

4.モンテヴェルディとオペラの誕生

5.愛のシェイクスピア

6.愛のモーツァルト

――三大オペにおける演劇的空間の変容――

7.大劇場の成立からバイロイトの祝祭歌劇場の演劇空間へ

8.ワグナー歌劇から映画芸術の誕生へ

9.20世紀の巨大長編小説の世界

――ジョイスの“ユリシーズ”とプルーストの“失われた時を求めて”――

10.映画芸術の不思議さ――小津安二郎の場合

11.おわりに

 

 

概     要

劇場空間のなかで観客と演奏者とが、通常プロセニアムアーチと呼ばれる門型の額縁を介して対面する近‐現代の鑑賞の形式はいつの世も不変の、唯一の芸術鑑賞のスタイルなのであろうか。主‐客の論理的対立と云う近代主義的な認知構造とパラレルな関係にある近‐現代の演劇スタイルの起源を求めて、ギリシアの円形劇場、中世イギリスの野外劇や教訓劇、さらに私たちの鑑賞形式を根底のところで規定し、完成態として一世を風靡することになるバイロイト祝祭歌劇場におけるワグナーの試みについて触れながら、やがて20世紀に至って代表的でもあれば固有な芸術の一形式として演劇的空間にせり出してくる映画芸術の、現代と呼ばれる時代に占めるその象徴的な役割を文明論的に存在論的に問う。20世紀における映画芸術の成立を、主‐客が絶対的に対立する認知の絶対的な物象化、疎外態として、主‐客の相互疎外の完成系としてとらえ、そこから如何にして“親密なる空間”としてのギリシア古典古代期のオルケストラやコロスがありえたかの本来的な意味をとらえかえし、そこから人間がそこにおいて初めて人間でありうる“場”としての演劇の存在の意義を問う。

演劇!諸芸術の王道としての演劇とは、ソクラテスニーチェが正反対の立場から見ぬいていたように恒久不変の絶対空間ではなく、流転し現成する“時制”をもった空間なのである。