アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

アリアドネ会修道院附属図書館・アネックス一号館 本館はこちら→ https://ameblo.jp/03200516-0813  検索はhttps://www.yahoo.co.jp/が良好です。

アメリカ映画"死刑執行人もまた死す”1943年をみる アリアドネ・アーカイブスより

 
 ”死刑執行人”と呼ばれたナチの実在の長官、ラインハルト・ハイドリッヒが1942年にチェコ愛国者に暗殺され、その見せしめのために、数百人のプラハ市民を、暗殺者が自首して出てくるまで、無作為に処刑したという史実に基づいている。前半は、第二次大戦かのナチによる恐怖政治が何であったかを映像で見せている。映画の前半は、国民の英雄でもある暗殺者を守り通すのか、それとも無辜のプラハ市民を救うために自首して出るか、出させるか、という登場人物たちの葛藤を通して描かれる。亡命政府に協力するヒロインが、単純な愛国者として描かれていないことが共感を持てる。
 後半は、一転して、亡命政府側の二重スパイとナチの有能な警部をまんまと罠にかけて、”暗殺者”に仕立ててしまう、スリリングな”一石二鳥”案が功を奏して、ナチスプラハ市民への報復措置は失敗に帰する。ナチスは失敗を認めたあとも自己の威信を保つためにこの結末をこれ以上蒸し返さないことで結果的に敗北を認めることになる。映像は、事件収束後も処刑者リストとして見せしめのために拘置していた人質数百名を放免しうるのではなく銃殺刑にしてしまう。
 予想がつかない筋の展開にいつしか巻き込まれてしまうのだが、映画のできとしては、ナチの風景を描いた前半が良い。後半もスリラーとしては楽しいが、前半のナチの不気味さを描いた部分の恐怖感には及ばない。

<スタッフ>
監督:フリッツ・ラング
原案:フリッツ・ラングベルトルト・ブレヒト
脚本:    〃         〃
   ジョン・ウェスリー
撮影:ジェイムズ・ウォン・ホー
音楽:ハンス・アイスラー
美術:ウィリアム・ダーリング

<キャスト>
ブライアン・トンレヴィ:ウォルター・ブレナン
アンナ・リージーン・ロックハート
アレクサンダー・グラナッハ:デニス・キオ―フ
ハンス・フォン・トワルトフスキー:ジョナサン・ヘイル

1943年 アメリカ作品