アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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”映画の宝物”――シネマ ヨーロッパ アリアドネ・アーカイブスより

 
19世紀後半の動く映像技術の開発から、主として無声映画の終焉する1920年代の終わりまで、ヴィクトリア時代華やかなりし頃から大恐慌を経て、世界大不況とヒトラーの誕生する時代を背景に描いた映画史である。

当初は動く画像としての映画がいかにしてそれ自身を洗練させて芸術になって行ったか、またアメリカに抗して如何にヨーロッパの映画人が闘ったか、それは最終的には最初から音声映画との戦いという、最初から勝負が明らかなものとの戦いではあったが。それよりもこの映画を見て興味深かったのは、技術的には問題がなくても結果としては音声映画のヨーロッパ進攻を阻止すべく固有な拘りをもっていたかに見える映画人の歩いた足跡である。

無声映画と言えばアメリカのチャプリン映画を除けば多くは見ていない。せいぜいガンスの”ナポレオン”かエイゼンシュタインの”戦艦ポチョムキン”程度であろうか。これらの諸作が名作であるのを認めるに吝かではないが、無声映画とは所詮過渡的な技術形態が生んだ過去の映画形式なのである。

映画が言葉を得ることによって豊かになることがあった。映画が言葉を得ることによって失ったものもあった。それは言語を超えて映画という芸術ジャンルに集うた国際社会の終焉でもあった。また亡命者やフランス国内のマージナルな位置にある人々を、標準語という映画の共通項ゆえの排除の論理が支配する時代の始まりでもあった。

古き良きヨーロッパの郷愁を代表するかのような無声映画を最終的に打倒したものは、音声映画とスター主義のハリウッドであり、他方では言葉を音響ととして使うヒトラーマイスタージンガーにかき消されていく、花火のようにあざとい閃光の乱舞する時代の幕開けでもあった。


DVDパッケージの解説より

" ヨーロッパ映画には躍動する青春期と世界を制覇した絢爛たる黄金時代があり、それにハリウッドが追従した。
 映画100年を記念したアンソロジー映画史の多くはアメリカ中心だった。ヨーロッパの映画人たちは「もっとあるはずだ。重要な欠落がないだろうか?ヨーロッパ映画が世界の覇権を握った時代もあった」と自問した。「”俺たち”の映画がたどった道のりをEU的な広い視野と現代感覚で見直し、愛と尊敬をこめてドキュメントにしよう」。7つの国のライブラリーやコレクターが秘蔵する数百本の名場面の数々やメイキング映像が滝のように流れ出す。
 貴重な新発見が珍しくない。伝説の名作は息を吹き返し、私たちはタイム・スリップして公開当時を体験する。DVDに対応する新鮮な画像も少なくない。細かい神経の行き届いた密度の高い集団作業である。
 淀川長治氏は”驚いた、ひっくり返るくらい立派なものです”と自分から総監修を引き受けた後に亡くなった。”

日本語ナレーション制作:株式会社東北新社
オリジナルナレーション:ケネス・ブランナー 
1995年 イギリス作品 348分 モノクロ一部カラー
企画・制作・販売:螢▲ぁΕ凜ー・シー/映像文化振興協会

DISK・1 第1章 すべてのはじまり
     第2章 アートシネマの開花
     第3章 躍動し 創造するカメラ
DISK・2 第4章 光のシンフォニー
     第5章 失われた機会
     第6章 そして映画は語り歌う

<おもな証言者と姿を見せる巨匠たち>
アナベラ/クロード・オータン・ラライングマール・ベルイマンルネ・クレールジュリアン・デュヴィヴィエ/ジャック・ファデ―/アべル・ガンス/ジョン・ギールグッド/アルフェレッド・ヒッチコックフリッツ・ラングジャン・ルノワール/レ二・リーフェンシュタールフレッド・ジンネマン(ABC順)