アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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"長崎ぶらぶら節”――失われた日本人への挽歌

 
こうしてみると、いまは斜陽の一地方の造船町、長崎が、つくづく都会だったのだな、と思う。それは勿論企業城下町の財力と丸山という特殊な世界が醸し出したせかいかもしれない。

この映画は、古き良き日本人の群像を描いたものである。映像が時に詠嘆性に流れるのは、古き良きの本がもはや帰らぬ対象であることを観念しているからにすぎない。深町監督の映像はいかにもかってありえたような人間像を伝えている。しかし、かってもいなかったし、ましてや現在もいるわけではない、けっしてこの世に存在したこののない、理念的人間像なのである。典型性とはそのようなものなのである。

理念性が極まるのは、やはり旅先で添い寝をする場面であろう。二つの寝床にお互いが同じ方向を向いて”く”の字を描いて床に就く場面を例にとろう。二人が肉体関係にいるのを拒むのは愛の純粋性を保つためではない。愛の純粋性を確信するがゆえに、この世の秩序の平衡をいとおしんだのである。

これはいはゆる男女の純愛を描いたものではない。歌の力、芸の力というものを通じて巡り合った男女の、この世とあの世の形而上学的な関係を描いたものなのである。


以下goo映画より

<あらすじ>
日本三大花街のひとつと言われた丸山の遊郭に売られておよそ40年、長崎一と言われるまでの名芸者となった愛八は、その気っぷのよさから誰からも慕われていた。ある日、彼女は五島町の大店・万屋の十二代目で、長崎でも指折りの風俗研究の学者・古賀と運命的な出会いを果たす。学問を極める為なら、財産を使い果たしても構わないと考えている古賀。そんな古賀の頼みを受けて、愛八は長崎に伝わる歌を探し記録する旅に同行する。旅は約二年間に渡り、やがてふたりの間に特別な感情が芽生えるが、決して肌を重ねることはなかった。旅の終わり、ふたりは長崎ぶらぶら節という歌に出会う。それは、愛八にとって想い出の歌であった。彼女が遊郭に売られる時、女衒の男が歌ってくれた歌だったのだ。歳月が過ぎ、年号は昭和へ移った。古賀と会わなくなっていた愛八は、少女の頃から可愛がっているお雪に芸を仕込んでいた。ところが、そのお雪が肺病にかかってしまう。決して安くはない治療費用を捻出する為、詩人・西條八十の紹介で“長崎ぶらぶら節"をレコードに吹き込み、その印税を全てお雪の治療費に当てる愛八。今や、お雪は愛八の人生そのものとなっていた。お陰でお雪は快復し、お披露目の日を迎える。だが、その席に披露目の資金を提供してくれた古賀が招待されていることを知った愛八は、決して顔を出そうとしなかった。彼女は、古賀への想いを一通の手紙に認めると、参詣した身代わり天神の境内で息絶えるのであった。


キャスト(役名)
吉永小百合 ヨシナガサユリ (愛八(松尾サダ))
渡哲也 ワタリテツヤ (古賀十二郎)
高島礼子 タカシマレイコ (米吉)
原田知世 ハラダトモヨ (梅次)
藤村志保 フジムラシホ (山口富美江)
いしだあゆみ イシダアユミ (古賀艶子)
尾上紫 オノウエムラサキ (雪千代)
高橋かおり タカハシカオリ (お喜美)
松村達雄ツムラタツオ (米屋の幸兵衛)
岸部一徳 キシベイットク (西條八十
永島敏行 ナガシマトシユキ (不知火大五郎)
勝野洋 カツノヒロシ (おでん屋の留吉)
内海桂子 ウツミケイコ (音丸
渡辺いっけい ワタナベイッケイ (松尾与三治)
スタッフ
監督
深町幸男 フカマチユキオ
製作総指揮
植村伴次郎 ウエムラバンジロウ
高岩淡 タカイワタン
プロデューサー
木村純一 キムラジュンイチ
天野和人 アマノカズト
林哲次 ハヤシテツジ
妹尾啓太 セノオケイタ
原作
なかにし礼カニシレイ
脚色
市川森一 イチカワシンイチ
企画
近藤晋 コンドウ
岡田裕介 オカダユウスケ
早河洋 ハヤカワヒロシ
撮影
鈴木達夫 スズキタツ
特撮監督
佛田洋 フツタヨウ
音楽
大島ミチル オオシマミチル
音楽プロデューサー
北神行雄 キタガミ
美術
西岡善信 ニシオカヨシノブ
衣装(デザイン)
松田孝 マツダタカシ
録音
三宅弘 ミヤケヒロシ
佐俣マイク サマタマイク
スクリプター
河島東史子 カワシマトシコ
スチール
大木茂
その他
森岡茂史 モリオカシゲフミ
山川秀樹
友竹哲也 トモタケテツヤ
竹本洋二
山本文勝 ヤマモトフミカツ
石井教雄 イシイノリオ
高橋政千 タカハシマサカズ
中根伸治 ナカネシンジ
鈴木啓造 スズキケイゾウ
安藤和也 アンドウカズヤ
坂井竜一 サカイリュウイチ
松浦芳 マツウラヨシ
高木敏喜 タカギトシキ
鈴木昶
中山亨 ナカヤマリョウ
鈴木昶
中山亨 ナカヤマリョウ
監督補
土屋源次 ツチヤゲンジ
助監督
平田博志 ヒラタヒロシ
照明
安藤清人 アンドウキヨト