アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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ジャン・コクトー”美女と野獣”をみる アリアドネ・アーカイブスより

 
野獣といってもぬいぐるみのように可愛いい?野獣!それにフランス語の発音が綺麗で、ベルがすぐに心を許してしまうのもなるほど、という気がする。しかし信ずる者のためにもし願いが聞き入れられないようなことがあれば、心労のあまり死んでしまうであろうというほどの純情さである。

野獣との会話の語尾には、まるで愛する人を確認するかのような「・・・ベール」の甘い母音が何度も繰り返される。怖いなどというものではなく、廊下を照らし出すために長い廊下に差し出された、蜀台をもった人間と思しき手の連なりがシュールな効果を上げている程度である。

映像的に最も異化的な場面は、宝庫を守るディアナの塑像が侵入してきたベールに好意を抱く従兄に弓を射る場面であろう。射落とされた体はたちまち野獣に変貌し、一方ベールの脇で可憐にも息絶えた野獣は王子に変貌してめでたく幕となる。

キュービットの弓の効果については聞いていたが、ディアナの弓については初めて知った。


goo映画より

<あらすじ>
昔、年老いた商人がいた。末娘のベルは美しく優しい娘で、いつも意地悪の二人の姉にいじめられていた。彼女は腕白な兄の友達アヴナンから求婚されていたが、父の世話をするために拒んでいた。父は自分の船が沈んだので破産を覚悟していたが、その一せきが無事入港したと聞いて喜んだ。二人の姉は宝石や衣しょうをお土産にねだったが、ベルは唯バラの花が欲しいといった。父が港に着いてみると船は債権者に押収されてしまい止むなく夜道を馬に乗って帰って来る途中、何時の間にか道を踏み迷ってこれまで見たことも聞いたこともない荒れ果てた古城に行き当った。

人影もなく静まり返った場内の異様な恐しさに逃げ出して庭に出るとそこには香しいバラの花が咲き誇っていた。ベルのことを想い出してその花を一輪手折った時、突如眼前に一個の怪物が現われて立ちふさがった。形は人間だが全身に毛がそそり立ち、物すごい形相をして彼をにらんでいる。野獣はこの古城の主であった。大切なバラを盗んだ罰に命をもらうといったが、もし娘の一人を身代りによこせば一命を助けてやると約束し父を魔法の馬に乗せて帰した。

ベルはこの話を聞いて責任を感じ父の生命を助けるために白馬に乗って単身野獣の居城へおもむいた。野獣は醜怪なその容ぼうにもかかわらず優しく堂々たる言葉で毎夜七時に食事の時だけ会いたい。そして「私の妻になっておくれ」と問います、といったがベルは「いやです」と答えた。美女と野獣の生活はこうして始まったが、ベルは次第に野獣のやさしい心に幸福な自分を見出すようになって来た。

会いたい人の顔をみられる魔法の鏡でベルが父の顔を見ると、父は心労のため病床にふし、家財はみんな差押えられていた。父想いのベルは野獣に一週間の約束で家へ帰ることとなり、野獣は信頼の形として宝庫ダイアナ亭の金の鍵と、何処にでも行ける手袋を与え、一週間経って帰って来なければ自分は心労のために死ぬであろうというベルが家に帰ると父は急に元気になったが、二人の姉妹のせん望と、ベルを思うアヴナンの野望とが一緒になってベルの金のかぎを奪い、兄とアヴナンは野獣を退治して宝物を奪う計画を樹てた。

ベルのお迎えにに来た白馬に乗って城に着いた兄とアヴナンはまづダイア亭の宝物をねらった。一方、ベルは魔法の鏡で野獣をみるとベルを慕う余り苦もんする野獣の姿を見出して、直ちに魔法の手袋をはめて野獣のもとへ行くと彼は正にもん絶せんとするところであった。アヴナンは亭の屋根を破り、中へ潜入しようとした途端、傍に立っていた彫像ダイアナがその手にもつ弓をやをら持ち上げて放った矢に、背を射抜かれ、突如野獣に変身してしまった。あたかもその時ベルの介抱にもかかわらずついにもん絶したと思った野獣の姿はかき消すように消えて、こつ然と輝くばかりの美しい王子が現われた、それはアヴナンによく似た王子だった。王子は長い間魔法使いのために野獣にされていたが、今、ベルの愛のひとみは元の姿に帰れたと語り、あなたは私の妃だといってベルを擁し、雲の上をはるか王子の城へと飛んでいった。

キャスト(役名)
Jean Marais ジャン・マレー (Avenant and Le Prince Charmant)
Josette Day ジョゼット・デイ (La Belle)
Marcel Andre マルセル・アンドレ (Le Pere)
Michel Auclair ミシェル・オークレール (Ludovic)
Mila Parely ミラ・パレリー (La soeur ainee)
Nane Germon ナーヌ・ジェルモン (La soeur)
スタッフ
監督
Jean Cocteau ジャン・コクトー
製作
Andre Paulve アンドレ・ポールヴェ
原作
Marie Leprince de Beaumont マリー・ルプランス・ボーモン
脚本
Jean Cocteau ジャン・コクトー
作曲
Georges Auric ジョルジュ・オーリック
美術
Christian Berard クリスチャン・ベラール