アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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クリント・イーストウッド”グラン・トリノ”をみる アリアドネ・アーカイブスより

 
クリントイーストウッド映画の集大成である。
人間嫌いの頑固な老人が、過疎に伴うステイタスの変動で東洋人の町になりつつある住宅地で、偶然にその異邦人の生活のスタイルを知り、癒され、やがてその異邦人集団のトラブルに巻き込まれて、自分自身の人生の歩き方の最終決着の仕方を見出す、そんな映画である。

 前半はディケンズの”クリスマス・キャロル”を思い出させた。実を言うと後半部分よりのこの前半部分の方が良い。後半の復讐劇にまで高まっていくドラマツルギーは、西部劇の常套手段、――かよわき者への無慈悲な暴力の行使と、胸のすくようなアクションによるカタルシスの解放、とくればなんだ、と思うかもしれない。事実、”許されざる者”ではまるで教科書のような純粋形を見せられて、忘れ難い印象を残している。
 
この映画のエンディングにクリントイーストウッドが選択したのは、だれもがやるであろうという予想を裏切って、無腰で敵陣に一人臨んだ主人公は、多数の無法者の凶弾に蜂の巣のように晒されて物言わぬ遺体となる。つまり映画人クリントイーストウッドが選んだ映画人生の終わり方とは、西部劇の定型を裏返してみせることであった。

換言すれば、裏返されたドラマツルギーの在り方の中に、復讐の連鎖を断ち切ろうとする意志と、マイノリティとりわけアジアとの連帯を、”硫黄島からの手紙”連作以降の、国際社会におけるアメリカの苦渋と孤立と、平和への希求を代表的アメリカ人としての政治的メッセージとして伝えているかのようだ。



<あらすじ>


朝鮮戦争の帰還兵でフォードの自動車工だった老人コワルスキーは、妻に先立たれ息子たちにも邪魔者扱いされつつ、日本車が台頭し東洋人の町となったデトロイトの通りで隠居暮らしを続けていた。外国人を毛嫌いしていた彼の家にヴィンテージカー、グラン・トリノを狙い、ギャングらにそそのかされた隣家のモン族の少年タオが忍び込むが、コワルスキーの構えたM1ガーランドの前に逃げ去る。

その後、なりゆきでタオの姉スーを不良達から救ったコワルスキーは彼ら家族の温かさに親しみを覚え、タオに一人前の男として仕事を与えてやろうとするが、それを快く思わないモン族のギャングらがタオにからみ、顛末を聞いて激昂したコワルスキーはギャングのメンバーに報復を加える。これに対してギャングらは一矢を報いようとタオの家に銃弾を乱射し、スーをレイプする。

復讐の念に燃えるタオと、それを諌めるコワルスキー。報復の連鎖に終止符を打つべく、コワルスキーはひとりでギャング達の住みかに向かい、そこで懐から銃を抜き出すように見せかけたところ、ギャングらはコワルスキーに対して一斉に発砲、射殺し、その廉で検挙される。このとき既にコワルスキーは自宅を教会へ寄贈すること、グラン・トリノはタオに譲るよう遺言していた。


グラン・トリノ
Gran Torino
監督 クリント・イーストウッド
製作総指揮 ジェネット・カーン
ティム・ムーア
アダム・リッチマン
製作 クリント・イーストウッド
ビル・ガーバー
ロバート・ロレンツ
脚本 ニック・シェンク
音楽 カイル・イーストウッド
マイケル・スティーヴンズ
撮影 トム・スターン
編集 ジョエル・コックス
ゲイリー・D・ローチ
配給 ワーナー・ブラザーズ
公開 2008年12月12日
2009年4月25日
上映時間 117分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語・モン語
制作費 33,000,000ドル[1]
興行収入 247,303,152ドル[1]
allcinema
キネマ旬報
IMDb


キャスト [編集]
クリント・イーストウッド:ウォルト・コワルスキー
ビー・ヴァン:タオ・ロー
アーニー・ハー:スー・ロー
クリストファー・カーリー:ヤノヴィッチ神父
ブライアン・ヘイリー:ミッチ・コワルスキー
ブライアン・ホウ:スティーブ・コワルスキー
ジェラルディン・ヒューズ:カレン・コワルスキー
ドリーマ・ウォーカー:アシュリー・コワルスキー
コリー・ハードリクト:デューク
ジョン・キャロル・リンチ:マーティン
スコット・リーヴス:トレイ