アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

アリアドネ会修道院附属図書館・アネックス一号館 本館はこちら→ https://ameblo.jp/03200516-0813  検索はhttps://www.yahoo.co.jp/が良好です。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

語られなかったサン・テチエンヌ教会の坂道 アリアドネ・アーカイブスより

語られなかったサン・テチエンヌ教会の坂道 2009-03-27 12:23:01テーマ:須賀敦子 3月27日 金曜日 晴れ 静かな春休み、幻想上の山の生活も終わりに近づいた。荷物をまとめて下界に引き返すとき、つまり俗人に戻る時が来ている。ほったらかしにしていた仕事が…

ミラノの休日 アリアドネ・アーカイブスより

ミラノの休日2009-03-26 10:53:24テーマ:須賀敦子 3月26日 木曜日 晴れ 昨年のミラノは快晴だった。その頃は須賀敦子も知らなくて――霧の風景を読んでいたが特別の印象を持っていなかった――言い訳のようにセンピオーネ公園からドゥオーモ広場までを所在なく…

マルタとマリアについて アリアドネ・アーカイブスより

マルタとマリアについて2009-03-25 10:22:53テーマ:宗教と哲学 3月25日す曜日 晴れ 朝から風が強く肌寒い朝である。ゲハルト・ヴェーアの評伝マイスター・エックハルトはルカ書第10章にかなりの紙面を割いている。イエスがとある村を通りかかるとマルタとマ…

アヴィニヨンからの帰り道 アリアドネ・アーカイブスより

アヴィニヨンからの帰り道2009-03-23 19:28:05テーマ:宗教と哲学 アヴィニヨンの異端審議所を後にした失意のマイスター・エックハルトが到達した最終の立場は「所有としての知」を超えること、つまり「認識」を超えることであり、「清貧」は新たな知の受肉…

放談漫談性言語理性批判――天使と人間の間に生きのびる言葉について アリアドネ・アーカイブスより

放談漫談性言語理性批判――天使と人間の間に生きのびる言葉について2019-05-16 09:29:53テーマ:宗教と哲学 ここに「批判」とは、クリティーク、すなわちカントが用いたような意味での、吟味、という意味合いで使っています。また、「放談」「漫談」とは、こ…

おバカ系タレント時代の終焉 アリアドネ・アーカイブスより

おバカ系タレント時代の終焉NEW!2020-05-12 00:52:27テーマ:文学と思想 おバカ系タレントと呼ばれた人たちの時代は過ぎつつあるのではないかと思っています。平和の代償としての、軽めのギャグと駄洒落、それを見ることによって癒される視聴者の罪のない優…

鈴木清順映画月間最終日――『河内カルメン』と『オペレッタ狸御殿』 アリアドネ・アーカイブスより

鈴木清順映画月間最終日――『河内カルメン』と『オペレッタ狸御殿』2018-05-29 18:51:49テーマ:映画と演劇 最終日は午前中に『代わりカルメン』をみ、午後から『オペレッタ狸御殿』を観る。 河内に隣接する生駒山系の麓の村に住むもぎたての果実のような娘が…

日本人の男らしさの矜持 アリアドネ・アーカイブスより

日本人の男らしさの矜持2018-05-24 08:18:57テーマ:文学と思想 昨今の様々の不祥事に伴う男たちの言い逃れの構図を見ていると、日本人の男らしさの論理はどうなっているのだろうか、と思う。私はなにも昔は良かったなどと云う話をするつもりはなくて、終戦…

清順の美学その2・下—―『陽炎座』 アリアドネ・アーカイブスより

清順の美学その2・下—―『陽炎座』2018-05-22 22:38:53テーマ:映画と演劇 次は『陽炎座』1981年である。構成が複雑で荒唐無稽である割には、終わってみれば単純なお話である。回帰と幻想の絢爛たる映像美の世界と云えるが、内容的にはさほどのものはない。 …

清順の美学その2・上—―『ツィゴイネルワイゼン』 アリアドネ・アーカイブスより

清順の美学その2・上—―『ツィゴイネルワイゼン』2018-05-22 17:15:53テーマ:映画と演劇 『ツィゴイネルワイゼン』1980年と『陽炎座』1981年、無内容で無理想と云う意味では、彼がものしてきた日活時代のヴァイオレンスものと変わりはない。 前者は、自殺願…

清順の美学その1――『野獣の青春と』l『殺しの烙印』 アリアドネ・アーカイブスより

清順の美学その1――『野獣の青春と』l『殺しの烙印』2018-05-22 16:49:07テーマ:映画と演劇 『野獣の青春』1963年と『殺しの烙印』1967年、映画自体には驚かなかったが、技法には驚いた。 後者は、殺し屋たちの戦後の挽歌を描いた抒情詩と云っても良いだろう…

鈴木清順監督の『悪太郎』 アリアドネ・アーカイブスより

鈴木清順監督の『悪太郎』2018-05-14 09:59:42テーマ:映画と演劇 今東光の原作による、自伝的な青春ドラマである。観る側に既に先入見のごときもの――古い日活時代の活劇擬きと云う――があるので、それなりのつもりでシネラと云う図書館付設の映画館に見に行…

死を死んで、死を生きる――平成の最末年を生きて アリアドネ・アーカイブスより

死を死んで、死を生きる――平成の最末年を生きて2018-05-07 13:07:34テーマ:文学と思想 もともと政治などにはこの世の戯言として無関心だった私が、政治や政局の動向に目を配る様になったのは、2015年9月の安保関係諸法案をめぐる攻防戦の可否が決定する最終…

奥山礼子『ヴァージニア・ウルフ再読』――芸術・文化・社会からのアプローチーー黄昏のロンドン(70 アリアドネ・アーカイブスより

奥山礼子『ヴァージニア・ウルフ再読』――芸術・文化・社会からのアプローチーー黄昏のロンドン(702019-07-12 21:05:40テーマ:文学と思想 さして浩瀚な書物の風でも分厚くもなく、薄くもないハードカバーの普通の製本、しかしながら奥山の本は私を唸らせまし…

芸術は必要か アリアドネ・アーカイブスより

芸術は必要か2019-07-12 13:34:37テーマ:文学と思想 1 人は必要不可欠なこの問いを、人生のどの段階かでは応えておかなければなりません。この問いかけを自らに掛ける過程で、人が人間になると云う固有の出来事も課題にあがってくるのです。 さて、通常今…

青木次生『ヘンリー・ジェイムズ』ーー黄昏のロンドン(69) アリアドネ・アーカイブスより

青木次生『ヘンリー・ジェイムズ』ーー黄昏のロンドン(69)2019-07-09 09:50:50テーマ:文学と思想 この本は通常は黒子に徹していたかにみえる翻訳と云う生業を旨とする学者さんが、ある程度功成り名を遂げて、と云うか、学者としても翻訳家としても学会でそ…

ブレヒトの映画『三文オペラ』――30年代の歴史の光と影 アリアドネ・アーカイブスより

ブレヒトの映画『三文オペラ』――30年代の歴史の光と影2019-07-05 19:23:16テーマ:映画と演劇 観終わった時はそうでなくとも、余韻を反芻するうちに、ーー彼の映像作品を反芻するうちに、偉大な作品に出会ったのだと云う実感が込みあげてくる。ブレヒトの…

まこさま問題について――ヘンリー・ジェイムズ風に語る言語の四つの諸相ーー黄昏のロンドン(67) アリアドネ・アーカイブスより

まこさま問題について――ヘンリー・ジェイムズ風に語る言語の四つの諸相ーー黄昏のロンドン(67)2019-06-25 12:26:49テーマ:文学と思想 まこさま問題の一連の報道を聴きながら、これによく似た話として思い出したのが、あろう事か、偉大なるヘンリー-ジェイム…

まこさま問題について――ヘンリー・ジェイムズ風に語る言語の四つの諸相ーー黄昏のロンドン(67) アリアドネ・アーカイブスより

まこさま問題について――ヘンリー・ジェイムズ風に語る言語の四つの諸相ーー黄昏のロンドン(67)2019-06-25 12:26:49テーマ:文学と思想 まこさま問題の一連の報道を聴きながら、これによく似た話として思い出したのが、あろう事か、偉大なるヘンリー-ジェイム…

アンチ-リア王ーー黄昏のロンドン-66 アリアドネ・アーカイブスより

アンチ-リア王ーー黄昏のロンドン-662019-06-23 00:48:19テーマ:文学と思想 双親をみおくり、二人の娘を家から送り出す。前の方では見送る側として今生の惜別の言葉を述べ、後の方では言葉を述べ華詞を送られる。述べる言葉は意識の範疇にあるけれども、述…

思い出の三角形ーー東急トライアングル切符 アリアドネ・アーカイブスより

思い出の三角形ーー東急トライアングル切符2019-06-21 20:29:03テーマ:わたしの住んでいる町 東急トライアングル切符とは渋谷、自由が丘、二子玉川の、主要三ヶ所を繋ぐフリーチケットである。それぞれ東横線、大井町線、田園都市線の一部を利用している。…

幸せの懐かしのレシピーーニュース シブ5ーー6-17日放送から アリアドネ・アーカイブスより

幸せの懐かしのレシピーーニュース シブ5ーー6-17日放送から2019-06-17 21:49:43テーマ:わたしの住んでいる町 六月半ばの梅雨に入りかけてはいるが、爽やかな風そよぐ夕暮れ、とは言っても一年で一番日が長いこの時期の五時代は未だ明るい。フロアに寝そべ…

悪について アリアドネ・アーカイブスより

悪について2019-06-11 17:38:07テーマ:文学と思想 先日は、福岡大学の映画鑑賞会に出向いて、他律的にホロコーストの問題を提起されて、私の眠りつつある理性を、ひととき目覚めさせました。 テレビの報道番組を見ると、高齢者ドライバーや引きこもりの問題…

悪について アリアドネ・アーカイブスより

悪について2019-06-11 17:38:07テーマ:文学と思想 先日は、福岡大学の映画鑑賞会に出向いて、他律的にホロコーストの問題を提起されて、私の眠りつつある理性を、ひととき目覚めさせました。 テレビの報道番組を見ると、高齢者ドライバーや引きこもりの問題…

偽造歴史家アーヴィングの背景――体制間の秩序の狭間を生きるものたち アリアドネ・アーカイブスより

偽造歴史家アーヴィングの背景――体制間の秩序の狭間を生きるものたち アリアドネ・アーカイブスより2019-06-09 07:38:45テーマ:歴史と文学 映画『否定と肯定』を見て分からないのは、アーヴィングと云う歴史家である。イギリス人である彼がなにゆえ、アウシ…

映画『否定と肯定』――ホロコーストの真実をめぐる戦い アリアドネ・アーカイブスより

映画『否定と肯定』――ホロコーストの真実をめぐる戦い アリアドネ・アーカイブスより2019-06-08 11:26:11テーマ:映画と演劇 この映画は1996年の「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」をドキュメンタリータッチで描いている。複雑な…

歴史の偽造について、『否定と肯定――ホロコーストの真実をめぐる戦い』 アリアドネ・アーカイブスより

歴史の偽造について、『否定と肯定――ホロコーストの真実をめぐる戦い』2019-06-08 10:28:28テーマ:映画と演劇 2016年のイギリス・アメリカ映画『否定と肯定』は難し映画である。難しいと云う意味は映画そのものの難解さを意味しない。ホローコーストの…

歴史の偽造について、『否定と肯定――ホロコーストの真実をめぐる戦い』 アリアドネ・アーカイブスより

歴史の偽造について、『否定と肯定――ホロコーストの真実をめぐる戦い』2019-06-08 10:28:28テーマ:映画と演劇 2016年のイギリス・アメリカ映画『否定と肯定』は難し映画である。難しいと云う意味は映画そのものの難解さを意味しない。ホローコーストの…

わたしの東京物語 (2) アリアドネ・アーカイブスより

わたしの東京物語 (2)2019-05-30 06:21:09テーマ:映画と演劇 親と子の間に介在する愛情の不均衡、リア王の昔から描かれた真実は、小津の映画では、まず第一に子供達家族の言動は物事の「自然」として描かれる。つまり忠孝の規範理念や道徳律の建前よりも自…

わたしの東京物語 (1) アリアドネ・アーカイブスより

わたしの東京物語 (1)2019-05-29 22:50:14テーマ:映画と演劇 東京物語と言えば、小津安二郎。高度成長期直前の、まだ豊かさが実感としては感じられない「戦後」のひとコマを描きました。ほぼ半世紀後、現代日本映画界を代表する第一人者である山田洋次によ…