アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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トリコロール”白の愛” アリアドネ・アーカイブスより

 
トリコロール三部作の最後に見る機会を得た”白の愛”。第一作目の”青の愛”が愛の不可能性と人間不信を底辺として、生きていくことの相対的な折り合いを描いていたのに対して、ここでは性的不能がテーマとなる。

主人公のカロルは性的不能が原因でフランス人の妻に一方的に離縁され、その日からクレジットカードも取引停止となり路上生活者となる。地下鉄の構内で知り合った同郷の男との不思議な出会いと友情、彼の手助けでどうにか祖国ポーランドに帰ることができた。ポーランドの荒涼とした白の世界とぬかるんだ地道が懐かしい。

ドラマが急遽展開を見せるのは、祖国ポーランドで実業家として成功したカロルが復讐するために自己の死を偽装し、別れた妻ドミニクに遺産を譲るとの遺言状を残して、これが原因でドミニクは殺人罪で逮捕され刑務所に収容されることになる。最終シーンは未決の彼女を慰問品を持って訪ねて行くカロルが窓こしにドミニクと言葉を使わずに、パントマイムで交信を交わす場面で終わっている。冷たい冬の窓の明かりを双眼鏡を当てて見つめるカロルの頬をとめどない涙が伝う。この涙が許しの涙なのか悔悟の涙なのか、最後まで確信を持てなかった。

ドラマ作りに少し無理があり、女性心理の単純化近代主義的なドラマツルギーとは異質である。ただしフランス国旗を象徴するといわれる”青の愛”、”白の愛”、”赤の愛”をひとつながりのものとして考えると、いずれも偶然がもたらす愛の局面を描いたものであり、心理ドラマではない。この点、評価が分かれるところだろう。


goo映画より

解説・あらすじ - トリコロール 白の愛(1994)
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解説
フランス国旗を構成する三つの色、青、白、赤をモチーフにしたキェシロフスキ監督のトリコロール三部作の二作目。弁護士で理論家でもあるクシシュトフ・ピェシェヴィチが共同脚本。製作はマラン・カルミッツ。撮影はエドヴァルト・クオシンスキ、美術は、ハリナ・ドブロヴォルスカ、クロード・ルノワールが担当。「青の愛」のジュリエット・ビノッシュに続き今回ヒロインを演じるのはジュリー・デルピー。「ゴダールの探偵」「汚れた血」などで注目され近年は、フランス、ポーランドアメリカなどで国際的に活躍している。もうー人の主役を演じるのは、キェシロフスキ監督にTVシリーズ十戒・10』でその演技を認められたズビグニエウ・ザマホフスキ。その他、アンジェイ・ワイダの「鉄の男」などに出演しているヤヌーシュ・ガヨスが脇を固めている。



あらすじ
パリ。まだ片言のフランス語しか話せないポーランド人のカロル(ヤヌーシュ・ガヨス)は、性的不能が原因でフランス人の妻ドミニク(ジュリー・デルピー)に離婚を求められている。カロルは裁判所で時間がほしいと哀願するがドミニクはもう愛してない、と言い捨てる。行き場をなくしたカロルは地下鉄の通路で同郷のミコワイ(ズビグニエウ・ザマホフスキ)に出会う。2人は奇妙な友情を温め始める。彼はカロルに人生に絶望して死にたがっている男に手をかす気はないか、ともちかけるがカロルは断わる。彼はミコワイのトランクに隠れ、パリで見つけた少女の胸像を抱えながら故郷に再び戻る。カロルは再び働き始めるが、美容師稼業に見切りをつけ、やくざな両替屋の用心棒になる。そして両替屋たちの土地買収の計画を出し抜くため動き始める。またフランス語も本格的に学び始める。そんなある日ミコワイに再会した彼は殺してほしいと願っている男の頼みを聞く。しかしその男はミコワイ自身であった。カロルの銃で一度死を見たミコワイは生まれ変わる。一方、大金持ちになったカロルは電話をしても受け付けてくれないドミニクをポーランドに来させるために自ら死を偽り、遺産の受取人をドミニクにした。葬儀に現われたドミニクが予想外に涙を浮かべているのを遠くから確認したカロルはその夜、彼女の前に現われ、2人は裸になり深く愛を誓い合う。カロルが満ち足りた顔で眠っているドミニクを後に去った後、彼の自殺に不審を抱いた警察がホテルに現われ、ドミニクを逮捕してしまう。カロルは人目を避け、ドミニクのいる収容所のまえに立つ。おりの中からのドミニクの視線とカロルの視線は愛を交し合う。


キャスト(役名)
Zbigniew Zamachowski ズビグニエウ・ザマホフスキ (Karol Karol)
Julie Delpy ジュリー・デルピー (Dominique)
Janusz Gajos ヤヌーシュ・ガヨス (Mikolaj)
Grzegorz Warchol (L'elegant)
Jerzy Nowak イェジー・ノヴァク (Le vieux paysan)
Aleksander Bardini アレクサンデル・バルディーニ (Le notaire)
Cezary Harasimowicz ツェザリ・ハラシモヴィッチ (L'inspecteur)
スタッフ
監督
Krzysztof Kieslowski クシシュトフ・キェシロフスキ
製作
Marin Karmitz マラン・カルミッツ
脚本
Krzysztof Piesiewicz クシシュトフ・ピェシェヴィチ
Krzysztof Kieslowski クシシュトフ・キェシロフスキ
撮影
Edward Klosinski エドワルド・クウォシンスキ
音楽
Zbigniew Preisner ズビグニエフ・プレイスネル
美術
Halina Dobrowolska ハリナ・ドブロヴォルスカ
Claude Lenoir クロード・ルノワール
編集
Urszula Lesiak
録音
William Flageollet
字幕
古田由紀子 フルタユキコ