アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

アリアドネ会修道院附属図書館・アネックス一号館 本館はこちら→ https://ameblo.jp/03200516-0813  検索はhttps://www.yahoo.co.jp/が良好です。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

六月度のベスト・5

六月度のベスト・5NEW!2020-06-30 22:31:33テーマ:ブログ 六月度のベスト・5は、以下のようになりました。 村上春樹のものが一位、二位となりました。現下の現代日本文学の状況下のなかで、ほとんど批判的言説が不在のなかで、この書はどういう威風に読ま…

ヴァージニア・ウルフ『波』 アリアドネ・アーカイブスより

ヴァージニア・ウルフ『波』2015-08-02 21:43:49テーマ:文学と思想 ・ ヴァージニア・ウルフの『波』は六人の独唱者によるモノローグ集である。モノローグと言っても内的独白ではなく、語り手の人格や個性を超えたアンサンブルと言っても良いのかもしれない…

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』――ジョイスの目で読む! アリアドネ・アーカイブスより

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』――ジョイスの目で読む!2015-07-29 19:13:26テーマ:文学と思想 ・ ジョイスの『ユリシーズ』を先駆として切り開かれた20世紀文学の前衛において『ダロウェイ夫人』は幾つかの点で類似している。 一つは小説の大枠と…

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』再見 ――プルーストの目で読む! アリアドネ・アーカイブスより

ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』再見 ――プルーストの目で読む!2015-07-27 23:07:17テーマ:文学と思想 夏、人生の真昼時、わたしはウルフの本を読みたくなる。日本で云う盛夏はイギリスにはなく、あくまで初夏の感じに、のようなのではあるが。 こ…

鏡花『夜行巡査』と『外科室』 アリアドネ・アーカイブスより

鏡花『夜行巡査』と『外科室』2015-07-24 08:07:43テーマ:文学と思想 1 ・ 近代と呼ばれる時代の人類史的な特殊さは、世界の多様性に準拠したそれぞれの地域におけるそれぞれの成熟と云う概念を一挙に崩壊させ、世界標準と云う坩堝に否応なしに巻き込んだ人…

鏡花『照葉狂言』と『日本橋』 アリアドネ・アーカイブスより

鏡花『照葉狂言』と『日本橋』2015-07-24 07:00:57テーマ:文学と思想 ・ 『照葉狂言』というのは難しい、特に最終章「峰の堂」の解釈が。 この小説は一葉の『たけくらべ』の延長線にあるある作品と云われ、子供の頃の世界の独自さと別れを描いた作品と一葉…

一葉と鏡花、鏡花の手紙から アリアドネ・アーカイブスより

一葉と鏡花、鏡花の手紙から2015-07-23 12:49:54テーマ:文学と思想 ` 一葉日記などを読んでみても鏡花に関する記述は皆無である。博文館の編集人、大橋音羽の見識は二人の資質を見抜いていたが、肝心の二人に客観的資料が欠けている。二人の才能の質を鑑み…

『修羅』1971--松本俊夫の世界その⑵ アリアドネ・アーカイブスより

『修羅』1971--松本俊夫の世界その⑵2018-06-24 19:35:05テーマ:映画と演劇 赤穂義士の仇討ちに加わるための百両の金子をめぐる、不可解な巡り合わせの数々を語る、鶴屋南北の世界に原作を求めた映像作品である。松本俊夫が優れた映像作家であり、同時に映…

鏡花『歌行燈』 アリアドネ・アーカイブスより

鏡花『歌行燈』2015-07-22 18:57:30テーマ:文学と思想 泉鏡花の世界は何かと問われれば、一芸至芸は神に通ず、と云うことではないかと思う。妖艶とか怪異、怪奇とかいうことが最近は持ちだされてくるけれども、そうは思わない。 鏡花の『歌行燈』でどこが好…

鏡花『縷紅新草』と『卵塔婆の天女』 アリアドネ・アーカイブスより

鏡花『縷紅新草』と『卵塔婆の天女』2015-07-21 10:01:23テーマ:文学と思想 泉鏡花、最晩年の『縷紅新草』と『卵塔婆の天女』を読んでみる。 『縷紅新草』は伯父と姪が展墓の道行の場面から始まる。主題的には語られないが墓参りの対象は今は亡き伯父には従…

子のこころ親は知らず 岩手の中学二年生の自殺と一葉の今日性 アリアドネ・アーカイブスより

子のこころ親は知らず 岩手の中学二年生の自殺と一葉の今日性2015-07-17 08:36:59テーマ:文学と思想 ・ 岩手の中学校でおきた列車自殺の事件は背景として家族の崩壊があったと云うことにより心が痛む。樋口一葉の登場人物が語る言葉のひとつに一葉の核心を…

樋口一葉日記 子供の宇宙 その二 アリアドネ・アーカイブスより

樋口一葉日記 子供の宇宙 その二2015-07-14 08:51:01テーマ:文学と思想 ・ まあこれから一般には言われないことを書こうとするのですがやはり躊躇がありますね。 先回は最後の方で一葉の『大つごもり』や『十三夜』に触れたのでした。この二作についてもわ…

樋口一葉、子供の宇宙 その一 アリアドネ・アーカイブスより

樋口一葉、子供の宇宙 その一2015-07-13 21:46:34テーマ:文学と思想 ・ 一葉日記の最後の方を読んでいたら最後の方に、樋口勘次郎と云う高等師範卒業生の手紙が来て、一葉が会ってみると云う場面があります。この出来事は明治二十九年の六月十七日以降の出…

樋口一葉日記――「身のふる衣」、「若葉かげ」 アリアドネ・アーカイブスより

樋口一葉日記――「身のふる衣」、「若葉かげ」2015-07-12 19:01:47テーマ:文学と思想 ・ 樋口一葉日記は、読みようによっては小説のように面白い。如何に小説が巧みの書き手であっても、一葉その人に似た人物、一葉を代弁する人物を主人公として描かれた小説…

一葉『ゆく雲』など アリアドネ・アーカイブスより

一葉『ゆく雲』など2015-07-11 15:41:45テーマ:文学と思想 ・ 『闇桜』や『うつせみ』のような作品を一葉自身がどのように評価していたかは分からない。前者は『たけくらべ』の逆方向の変奏曲、恋も愛も知らずに育った幼馴染が年頃になって、ひたすら相手を…

一葉『大つごもり』と『十三夜』 アリアドネ・アーカイブスより

一葉『大つごもり』と『十三夜』2015-07-10 23:10:34テーマ:文学と思想 ・ 『大つごもり』は貧しさゆえに、盗みをしてしまう娘の話である。盗みと云う行為が大文字の倫理や道徳の見地からどう見るかと云う次元以前に、犯さざるを得ない事情を、一葉は義理と…

一葉の問題作『われから』―― 一葉の死 アリアドネ・アーカイブスより

一葉の問題作『われから』―― 一葉の死2015-06-30 21:33:27テーマ:文学と思想 ・ 『われから』は、親子に二代わたる不吉な物語である。 あるところに、貧しいながらも円満に暮らす新婚の夫婦がいた。夫は下級の役所勤め、妻は派手ではないけでども、どうして…

一葉『にごりえ』 アリアドネ・アーカイブスより

一葉『にごりえ』2015-06-30 01:23:09テーマ:文学と思想 ・ 『にごりえ』はとある場末の一人の酌婦の物語といってよいだろうか。正式の遊郭を名乗ることはできないので、酒瓶などを並べて居酒屋か料亭のようなふうを装っているが、みんな知っているのでそれ…

一葉とわたし アリアドネ・アーカイブスより

一葉とわたし2015-06-29 00:33:32テーマ:文学と思想 http://tokyozigzag.c.blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_7fe/tokyozigzag/002.jpg?c=a1東京じぐざぐウォークから借用しています。 ・ さして昔のことでもないのに何か講演会のようなものがあって、それを…

一葉『たけくらべ』を読む アリアドネ・アーカイブスより

一葉『たけくらべ』を読む2015-06-28 01:57:01テーマ:文学と思想 ・ 『たけくらべ』を読んで幾つかの事を考えた。 一番目は、下谷龍泉寺町のこと。樋口一葉と云えば、悲運の波間に沈んだ薄命の天才女流作家と云う面ばかりで考えがちであるが、龍泉で駄菓子…

樋口一葉の『別れ道』―― 一葉文学の最高傑作か アリアドネ・アーカイブスより

樋口一葉の『別れ道』―― 一葉文学の最高傑作か2015-06-26 19:42:21テーマ:文学と思想 ・ 『別れ道』は概して長いものを書かなかった一葉の諸編の中でも短い、『たけくらべ』の四分の一にも満たない分量である。一夜の出来事を簡素に綴った『十三夜』に比べ…

森鷗外『雁』再見 アリアドネ・アーカイブスより

森鷗外『雁』再見2020-02-06 22:30:14テーマ:文学と思想 再見、再発見と言うべきか。再発見と云う言葉は恥ずかしい。小説を幾度か読み返して発見はあるものだが、今回の『雁』のような経験は希有である。 まずこれを、金貸し町人の妾であるお玉の悲恋物語と…

70年目の夏に思う――批評の精神ということについて アリアドネ・アーカイブスより

70年目の夏に思う――批評の精神ということについて2015-06-18 08:37:09テーマ:政治と経済 ・ 漱石の『こころ』と村上春樹の『ノルウェイの森』を平衡読みしながら様々の事を考えました。 何れの作品も、死者が生き残ったものを如何に支配したか、と云うお話…

江藤淳の死――『妻と私』 アリアドネ・アーカイブスより

江藤淳の死――『妻と私』2015-06-15 17:10:45テーマ:文学と思想 ・ 『妻と私』は、江藤淳の妻をみおくる闘病日誌である。 日々、人は膨大な人の死の量を無機的な数値に於いて経験している。違うのは他ならぬ生活の伴侶の上にこの未聞のドラマが生じたこと、…

遥かなる死者たちの影――『こころ』と『ノルウェイの森』 アリアドネ・アーカイブスより

遥かなる死者たちの影――『こころ』と『ノルウェイの森』2015-06-13 11:12:23テーマ:文学と思想 1序説的概説:夏目漱石を論じようとしていつも疑問に思うのは、なぜ漱石だけなのかと云う思いと、漱石の諸作中でも何故『こころ』だけが偏愛されるのか、と云う…

神谷美恵子の「精神的なもの」をめぐって アリアドネ・アーカイブスより

神谷美恵子の「精神的なもの」をめぐって2009-04-12 10:58:56テーマ:宗教と哲学 4月12日 日曜日 晴れ 昨日は終日、ほったらかしにしておいた技術士倫理論文を仕上げる。一昨年より年一本、今年で三部作は一応完了ということになる。テーマはいたって壮大で…

森さんというひと アリアドネ・アーカイブスより

森さんというひと2009-04-08 12:33:24テーマ:宗教と哲学 森さんという人は、やはり普通の日本人とは違ってますね。森さんが戦後の日本人に感じた不満はわかります。言い方は悪いのですが、そういう人たちと一緒にやれないと思った気持は良くわかります。日…

「純粋経験」について、なお良く考えてみたい アリアドネ・アーカイブスより

「純粋経験」について、なお良く考えてみたい2009-04-06 20:53:24テーマ:宗教と哲学 上田閑照の『西田幾太郎とは誰か』中から該当箇所を引用してみます。上田は森有正の「経験」概念との類似性についてにふれて 「森有正の文章に、西田ならばまさに純粋経験…

森有正さんの「経験」ということについての往復書簡? アリアドネ・アーカイブスより

森有正さんの「経験」ということについての往復書簡?2009-04-05 07:47:22テーマ:宗教と哲学 森さんのいう「経験」というのがいま一つ、私には分からないのですね。経験という言葉で、何を伝えようとしたのか。 森さんは、あるところで日本人の自然観を痛烈…

江藤淳の青春――『アメリカと私』を読む アリアドネ・アーカイブスより

江藤淳の青春――『アメリカと私』を読む2015-06-14 22:23:07テーマ:文学と思想 ・ 江藤淳の『アメリカと私』を読んで、わたしは違った表情の江藤を見出す。この書は本人もそう書いているように、江藤淳と云う批評家がアメリカと出会う話である。アメリカとの…