アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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九鬼周造に現れた五感――『「いき」の構造』を読む アリアドネ・アーカイブスより

 

九鬼周造に現れた五感――『「いき」の構造』を読む
2009-05-31 17:01:21
テーマ:文学と思想

九鬼周造の本については少し落ち着いて論じることが必要だろう。とりあえず、今回最も注目したのは、次の部分であった。

(視覚と聴覚ではなく)、この味覚と嗅覚と触覚とが原本的意味における「体験」を形成する。いはゆる高等感覚は遠官として発達し、物と自己とを分離して、物を客観的に自己に対立させる。かくして聴覚は音の高低を判然と聴き分ける。しかし部音は音色の形をとって簡明な把握に背こうとする。視覚にあっても色彩の系統を立てて色調の上から色と色との間には把握し難い色合いが残る。そうして聴覚や視覚にあって、明瞭な把握に漏れる音色や色合いを体験として拾得するのが、感覚上の趣味である。

ここから九鬼周造は、劣等感覚、いい換えれば、共通感覚の、あるいは先-経験性の精緻な分析に繋がっていくかのようである。この問題については、今後、もう少し時間をかけてみたい。

<データ>
九鬼周造『「いき」の構造』昭和49年3月20日 第24刷り 発行 岩波書店
安田武多田道太郎”『「いき」の構造』を読む”1979年3月20日1刷り発行 朝日新聞社