西洋舞台演劇史素描・3 アリアドネ・アーカイブスより
西洋舞台演劇史素描・3
2011-08-01 22:23:25
テーマ:映画と演劇
3.コーンウォールの中世イギリスの円形舞台から野外劇へ
15世紀に行われたコーンウォールの円形舞台や道徳劇と呼ばれるものの詳細は伝わっていない。僅かに“忍従の城”の舞台図が現存しておりリチャード・ササン博士により概要がほぼ明らかにされていることをサイモン・ディドワースがヨーロッパにおける劇場の変遷の歴史的過程を語ったその著“劇場”において書いている。
そこでは円形舞台のまわりが円周状に掘り状に掘り下げられ、その剰余の土を盛り上げて平たい台形状の演壇となし、観客席をも組み込んだ巨大な円形のステージが形成され、中央には城を象徴する巨大な樹木状のものが、反対の円周上には中心を取り囲むように複数の小高い丘かステージが、それぞれ中世のキーワードである“神”・“悪魔”・“欲望”・“肉体”・“世間“の隠喩的意味を代表して、つまり衆舞台も含めた都合六つの舞台で交互交互に、あるいは同時進行的に舞台進行が進められたものであるらしい。観客は堀で囲まれた台形の円周内に渾然一体として俳優や演出家と混在していたわけであり、物語を知りたいと思えばその何れかの舞台に注目し、そこまで出向いて”見聞“しなければならなかったのである。つまり近代芸術に固有の神の代理人の如き作者の万能性や観客の特権的鑑賞性を保証するような視座は無かったのである。知りたければ知るために”出かけていく“、当たり前のことのようなのだが、不動のものとしての作者や演出家、そして特権的に鑑賞するものとしての観客というあり方は顕著ではなかった。中世の野外劇は、自然という広大な有情の環境下で変幻自在の夢幻の演劇空間を現出させていたのである。
4.モンテヴェルディとオペラの誕生
(執筆未了)