中村善也"ギリシャ悲劇入門” アリアドネ・アーカイブス
中村善也"ギリシャ悲劇入門”
2010-02-27 23:46:58
テーマ:文学と思想
”ギリシア悲劇入門”
1 序にかえて
2 ソポクレスの「オイディプス王」
3 「エレクトラ」をめぐって
4 アイスキュロス劇の世界へ
5 エウリピデスの出発
6 新しい劇
”宇宙秩序の中での人間のあり方を問うアイスキュロス、心理の起伏を劇的に展開するソポクレス、神話・伝説世界の「現実らしさ」つ追及するエウリピデス。――三大悲劇詩人の代表作に鋭利な解釈と批評を加え、二千数百年前のアテナイの舞台の魅力を鮮やかによみがえらせる。「悲劇理論」で身構えることなく、「ドラマ」自体に率直に向き合い、ギリシア悲劇の多彩な世界に読者を誘う・”(同書カバー紹介文)
(付記)
ギリシアの野外劇場は二万人を収容するような半円形の観客席と、今日でいう舞台――今日の舞台と比べて細長く奥行きの浅いものだったらしいが――と、それからその間に、今日のオーケストラボックスに相当する円形のコロスや舞踏団が歌ったり舞ったりする円形の低いステージがあったことは、残存する遺跡から知ることができる。
この本は有名なギリシア悲劇の幾つかを採りあげ、解説しながら、当時の舞台環境や演じられた雰囲気の説明を通じて、ギリシアの演劇世界に案内してくれる。宇宙の理法、自然の倫理から人間の倫理のドラマまで、通時的に解説するのではなく、ソポクレスの人間理解を中間において、その左右にアイスキュロスとエウリピデスを配置した構成になっている。
ギリシア哲学との関係でいえば、ソクラテス以前にこれだけの水準の人間認識がギリシアにはあったことになる。ただこの書の中で自明視される”自然”や”人間”の理解の仕方については今後も関心をもって考えていきたい。
中村善也”ギリシア悲劇入門” 1995年5月 第一刷 同時代ライブラリー186