アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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国民の幸せと云うプラスの側面に踏みこむと決まってブレーキがかかる官邸主導と云う名のシステム

国民の幸せと云うプラスの側面に踏みこむと決まってブレーキがかかる官邸主導と云う名のシステム
NEW!2020-03-03 11:07:39
テーマ:政治と経済

27日の劇的とも唐突ともとれる安倍首相の休校宣言は様々な波紋を広げていますが、私はこの会見をテレビで見て感じた最初の印象は、首相の孤独さでした。文科省にとって、この時期重要であるべきはずの宣言?――要請を、当の監督大臣であるはずの萩生田文科相が知ったのは、あるメディアによれば当日の午後であった、と云うことになっています。もちろん等の議題が水面下で進められていたことは各閣僚とも薄々は知っていたでしょうが、協議には預かれず、報道担当としてのみの利用となりました。後に伝えられたところでは、首相は今井補佐官のような一部の側近と協議して決めたのだ、官房長官も相談に預かれなかった、と云う情報もあります。同じ与党である公明党幹部が直前まで知らされていなかったことも明らかになりました。

 いま首相は一連の委員会での答弁を通じて、このような重大事をどのような根拠で、しかもこの時期に決めたのかと、野党などから厳しく追及されていますが、彼固有の思い付きや独断のきらいがあったとはいえ、また遅すぎたに帰したとはいえ、宣言がないよりはましだった、と云う意味で評価してあげたいと思いました。もちろん、追い詰められた挙句の思い付きやひらめきの類ですから、具体的な方策などあるはずがありません。――せいぜい言えたのは、翌日になって、これはあくまで要請であって、各自治体で柔軟に対応していただきたい、と云う無責任なものでした。しかしかかるマイナス面を差し引いても、国民に注意勧告を促したという、情緒面での効果だけとっても、ないよりはましだったのです。

 さて私は、安倍晋三氏に同情しています。かれが八年間がかりで構築した身内内閣と言うべきものが肝心な時に機能しなかったことが哀れでならなかったのです。――この身内内閣、情報操作と不祥事抹消については高い機能を発揮できたのに、真に国民が必要とする事態にあっては機能に自動ブレーキがかかるシステムだったのです。首相が側近や閣僚に図らなかったのは、反対意見が出て時間を取られてしまう、と云う焦りがあったのだと思います。

 安倍首相の会見風景には、野党の反発は目に見えながら、同時に身内にも確かな相談相手がいない、と云う孤独な相貌がありありと現れておりました。それでセンテンスごとに、内閣総理大臣として、と云うフレーズを繰り返さなければならなかったのです。まだ経済が堅調に推移していた頃の同じフレーズを連呼した彼の姿を思い出し、隔世の感を感じます。

  安倍晋三氏が八年間かけて構築したアベノミクスなる官邸主導のシステムは、政治的不祥事の隠匿と隠滅には最大の効果を発揮するにもかかわらず、国民の健康と幸せと云う等の真に大事な局面においては機能しない、と云うシステムなのでした。

 最後に、官邸主導と云う名のシステムがマイナスの面については大変優れて機能すると云う側面を持ちながら、国民のため、公民のために、つまりプラスの方向については機能不全を起こすと云う不思議さは興味ある今後の課題です。

 一例をあげると、今回の首相の宣言のなかに盛り込まれた迅速な新型コロナウイルスへの検査体制についても、臨床医の所見によって検査機関を選べるという表現が、厚労省の法被用では感染センターを経由する、と云う任意の解釈に変更されていました。トップダウンで、国民の安全と安心を顧慮すると云う政治のプラスの方向を志向するといういことになると、決まってブレーキが働くのです。

 これは今回のコロナウイルス禍の端緒になったクルーズ船乗客等への検査体制の優柔不断さについても、厚労大臣の発言の段階では臨床医の判断とされていたものが、実施の段階ではいつの間にか、保健所と帰国者感染センターによってダブルチェックを受けることと変更されていた。医療関係のトップである厚労大臣の主張が無視される、しかもその点について厚労大臣が意義を表明しない、と云う不思議な風景が展開されていたのです。

 現在、内閣総理大臣安倍晋三氏が保険適用による検査を受けることの権利!と云う主張が、実際の運営においては中間に感染センターのチェック機能がフィルターとしてかかり、臨床医の所見のみでは検査に移行できないと云う、トップの正しい判断が一旦官僚機構に委ねられると正しく機能しないと云う、従来のスタイルを繰り返すと云うデジャヴュの風景を白日夢の様に見ると云う経験を繰り返しています。

 日本の政治システムが白日夢を見るような半病人のような官邸と政権と官僚の人たちに委ねられていること、考えてみれば悲しいことです。