アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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望月衣塑子”安倍首相の「学習しない強さ」と思想家。内田樹の「サル化する人類と社会」

望月衣塑子”安倍首相の「学習しない強さ」と思想家。内田樹の「サル化する人類と社会」
NEW!2020-03-02 18:11:04
テーマ:政治と経済

 相次いで現れた二つの発言は、なぜか安倍首相の、公立学校小中高一斉休校発言の波紋のなかで現れた。とりわけ後者の文章の内容は、人類史の退化のパターンのなかに置いた考察であって、安倍晋三氏の言動について言われたわけではない。しかしこの時期に発言が出たという点に、ジャーナリスティックな固有な意味があると考えるべきだろう。

1.望月衣塑子”安倍首相の「学習しない強さ」

 東京新聞記者・望月氏の発言は、「学習しない強さ!」は、物事の判断を論理の繋がりにおいてではなく、思い付きで判断する人間の内面に起きていることの、ある種の現象の不思議について、ある種の角度からある種の解明の光を当てるものであろう。

 安倍首相の「学習しない強さ!」とは、嘘がばれてもそれを押し通す押しの強さである。その押しの強さは性格的なものもあろうが、それだけでは説明できない。それを望月氏は論理的にものを考えることの出来ない晋三氏の脳みその脆弱さ、に認める。

 例えば誰もが知っている「1+1=2」が「2」であることを論理であると仮に仮定すれば、「1+2=3」を主張することは非論理と云うことに当然なる。しかし「1+1=2」で「3」ではないことを常日頃から納得して理解していない習慣性を持つある種の人間にとっては、「2」でも「3」でも単なる記号や符号の問題になる。

 「1+1=2」を「3」と主張し続けても、記号の置き換えの問題に過ぎないなら、本人にも嘘を言っている意識がない、と云うのである、つまり無敵である、と云うことになる。
 昔は、嘘をついてはならないという事は幼児が一番に教えられたことだが、原因や結果がどうのこうのと云うよりも、品位や品格の問題であった。つまり親が子供に教えたことの始まりは、人間の品位や品格についてであった。

2.内田樹の「サル化する人類と社会」
 
 思想家・内田氏の「”いまさえよければそれでいい」社会が”サル化”するのは人類が退化のフェーズに入った兆候」は、人が他の高等生物種とは際立った違いを説明する場合の、時間性が持つ構造についてである。人間が持つ実存としての時間とは、過去ー現在ー未来と云う三つの構造に分岐されている。人類以外の高等生物には現在だけが卓越していて、過去と未来がない。かれらの行動を見ているといっけん、過去と未来があるかに見えることもあるが、それは生存本能として学習された技能に過ぎないと思われる。
 内田氏は、人類がサル化しているだけでなく、既にサル化した人間の凡例をミスター・トランプと安倍晋三に見ている。
 本文を紹介する。

安倍晋三も嘘に嘘を重ねてきましたけれども、本人はそれほそ罪の意識はないと思います。「長期的に見て、こんなことを言っていて帳尻があうのか」と云う考え方をしない人間にとっては、「嘘をつかない」と云うインセンティブはありませんから”

 私に付け加える点があるとすれば、「自分だけ良ければよい」と云う考え方は資本主義に固有のものであるから、それを大上段に批判するのはあたらない。むしろ氏の指摘の重要なところは、生物種の人としての人間を人間たらしめる根拠を時間性に求めた点であろう。

 もう一点は、トランプと晋三を同列に並べた点である。トランプは晋三氏の教師かも知れないが、前者には嘘も方便、終わりよければすべてよしとでも言うべき、醒めた現実認識がある。他方、それつにひたすら追従する晋三氏には全体の合理性よりも身内性を優先するし、憲法改正などと云う途方もない神学的思考の持ち主でもある。ものごとを望月氏の言うように「論理的」に考え、思考を「時間性」において鍛錬する習慣を持つ人間ならば、言葉や言語と云う最も自分に似つかわしくない問題を、それを自分の代で成し遂げたいとか、自分こそ憲法改正の最適任者だなどと云う発言は出てこないはずである。

 時間性の欠如は、実は論理性の思考訓練とも関係があることで、論理性を持たない人間は時間性が脆弱なのである。時間性が脆弱な脳みその構造を持つ人間には論理性が育ちにくいのである。

 常々資本主義とは、適者生存、優勝劣敗のドライな市場原理が働くシステムだと思っていたのだが、一億の民を率いるにこの種の人間を据えてしまうという事の不思議さに、奇怪さに、いまわたしたちは民主主義を担うものとして直面している。