アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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愛のシェイクスピア・上 アリアドネ・アーカイブス

愛のシェイクスピア・上
2011-06-11 08:55:08
テーマ:文学と思想

 

 

 先日大学院の授業で講師の方から世田谷パブリックシアターの活動をご紹介していただいた中に、シェイクスピアの”一二夜”の舞台映像がありました。松たか子さんの”十二夜”。自在に舞台と観客席を微妙に配置変換できる最新の施設の一端を知ることが出来ました。

 プロセニアムアーチ!――通常自明視されている舞台と観客席の間の”額縁”が取り払われ、観客席と融合するような形で半円形の舞台が観客側にセリ出ていました。舞台と観客席の段差も少なく、弾き語りが舞台右手の隅っこで舞台でも観客でもない中間性を維持しています。そして驚くべきことに幕間においても弾き語りはおしゃべりを止めることなく大道芸人風のパフォーマンスを繰り広げ観客と聴衆の笑を誘ったことです。

 つまり、観客席の方から見ると、劇が幕間で完全に終わっているのかどうかという確信が持てないのです。つまり通常の見る者-見られる者の関係が不動のものではなくなっているのです。

 この講義では講義の主旨が舞台装置の紹介にあったため、シェイクスピア劇の紹介は断片的なものに止まらざるを得ませんでした。しかし飛び飛びの画像からだけでも”十二夜”は十分に感動的でした。シェイクスピアの喜劇と云うものに初めて眼を開かれた瞬間でした。

 それで書棚に積んであるだけにしてある我が家の白水のシェイクスピア全集を探してみたのですが、二十年以上も前に部分的に買いそろえた蔵書には悲劇や史劇が多く、該当するものがなく、やむなく下記のチャールズ・ラムの子供向けの本を二冊、ようやく探し出すことが出来ました。

 その中に”十二夜”はありました。そして戯曲を少年少女向きの物語本に書き換えたもの概要を読んだだけでも感動しました。結局両方の本を始めから終りまで読んでしまい、シェイクスピアの全体像に感嘆し、さらに余韻を追うように左方の本など二度も続けて読んでしまいました。

 ここに、四代悲劇と呼ばれる――”ハムレット”・”リア王”・”マクベス”・”オセロ”のシェイクスピアとは全く違った人物像が浮かび上がって来たのです。