アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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須賀敦子の本を読む愉しみ――佳き日が重なりますように アリアドネ・アーカイブスより

須賀敦子の本を読む愉しみ――佳き日が重なりますように
2018-03-23 09:51:25
テーマ:須賀敦子

 

 

 須賀敦子さんの本を大切にしています。
 個人全集を持つと云うのはこの一冊だけで、この本を購入した当時――全集本の箱の裏側にレシートを貼り付けていたので、2007年11月29日土曜日であったことが分ります――特別な思いで、購入したのでしょう。
 それからは、健忘症の人間に記憶や昔馴染んだ所作が少しづつ戻ってくるように、元々資質も感性の在り方も須賀さんとは似ていないので、少しずつ縁遠くなりはしましたが、折にふれて思い出すように読むと、つい中断することなく、区切りの良いところまで読んでしまいます。やはりこの感覚、個の感じだなぁ、と懐かしい知人に会ったように本との付き合い方を見直します。やはり、今後も須賀さんの本を、折に触れて、少しずつ少しずつ読んでいくのだろうな。まるで上等の珈琲のエッセンスを味わうかのように。
 写真は、そう云う思いを籠めて、植栽の陰に揺らぐ彼女の小型全集本を撮影してみました。イタリアへの想いを教えられましたし、感性の在り方を学びました。ふくよかで芳醇な女性ならではの時間、今後、老いの急坂、急峻に切り立つ尾根道、老いさきの厳しい嵐と木枯らしの夜に読む「冬物語」の囲炉裏端の一齣の遠ざかる記憶のひとつとして、シェイクスピアの全集とともに忘れ難く得難い宝物のひとつになるのでしょう。あ、もうひとつ、シェイクスピアの全集も所有しておりましたのを忘れていました。

 ところで昨夜は西の空に美しい月夜が戻ってきていました。
 春のことぶれとともに、皆さまにおかれましても、ますます佳いことが重なり続きますように。午前1時08分に初孫の誕生をみました。分娩室の閉ざされた扉越しに聴く産声は神秘的です。
 春の日は、しだいに日永くなります。