アリアドネの部屋・アネックス / Ⅰ・アーカイブス

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『さくらんぼの実る頃』 2021/05/05

 週の半ば、水曜日のものぐさで気怠いある日の午前中、朝日を浴びながら朝食の準備からデザート、そして洗いものを終えるまでの一連の作業の流れのなかで 最後はエスプレッソの香りに包まれて長い長い午前中の食事を終えるのですが しばしの気休めにとテレビのスイッチを入れたらパリの街歩きの映像が流れていた。ちょうど町のカフェで男女の老人たちのグループが歌を歌っていて優雅なランチタイムの時を愉しんでいたかに見えたのだが、そのとき歌われていた曲が『さくなんぼの実るころ』・・・・・

 

 数ある恋の歌かとばかり思っていたこの歌が、パリコミューンの歌だということを初めてしりました。テーブルを囲んだ老人のひとりが述懐するようにそう言う事を問わず語りの述べて、さらに向かい合わせの老人が呼応するように 恋も革命も実らないのが宿命だ、などということを微笑みながら語る、ーーまるでパリコミューンの時代からそれほど時間が経っていないかのように。

 

 この歌の歌詞の中で、「開いた傷口」という言葉が出てきて胸に突き刺さります。

 

 さくらんぼの実る頃とはちょうど今頃の季節ですね、三月十八日に始まった人類史を画する祭典の七十二日間はこうして幕を閉じたのでした。

 

 

 

 歴史的過去の感慨にこころうたれて、思い出の日めくりページを捲るように、YouTubeが次に示した候補の画面をクリックして聴くと、それは生々しく臓腑のなかに過去を蘇らせるのでした。ーー老人の感傷とお笑いください。パリコミューンが潰えたとき、主導的な闘士のひとりであったヴァランのかっこいいこと!

 

 もはやこれまでと思い定めたこの老ジャコバンは、広場から敵が布陣する表通りへと、誰もいない影を潜めた戦闘までの最後の静寂だけが支配する大通りを、ひとり、銃口だけが蜂の巣のように無数に穿たれた鈍く光る敵の隊列に向かって 自若としてひとり静かに歩いていくのですね!そして一斉射撃を浴びる!硝煙が石畳とパリの街に流れて。。。

 これが伝えられるパリコミューンを飾る最後の映像であったようです。

 

 加藤登紀子さん、あなたの心の傷口はまだ開いたままですか。