2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧
冬はつとめて 煌々と月の光が地上に落ちてきます。外装工事中だった久しくので締め切っていた窓を開けはなつと、ベランダに手すりの模様が月影に投影し、床から冷たく反射を返しています。月の光とはこんなにも明るかったのだ、と思いだし思いかえしました。…
夏目雅子の死2014-11-20 16:45:47テーマ:映画と演劇 ここに一枚の写真があって、名前のように褐色の肌は夏の日に輝いている。裕福な家庭に育ち、両親の深い愛情を受け、芸能人としても、ほとんど些細な悪意を受けることすらなく、誰もから大事にされる、し…
小津安二郎の『浮草』・旅芸人の記憶2014-11-17 19:25:18テーマ:映画と演劇 http://ecx.images-amazon.com/images/I/51N2Sd4mkUL.jpg 小津映画には小津調とでも云うべきトーンがあり、一方で熱狂的なファンを有するとともに、同工異曲でマンネリズム、退屈…
岸恵子の美しさ、映画『悪魔の手毬歌』など2014-11-17 00:10:33テーマ:映画と演劇 悪魔の手毬歌と云う映画、監督が市川崑でなければ見なかっただろう。横溝映画ではよく舞台になる岡山の北部の山間部の村、このあたりは何度か行ったことがるが、高速道路が…
映画『カティン』とNHKアーカイブス・アンジェイ・ワイダの軌跡2014-11-16 21:38:52テーマ:映画と演劇 まずはご覧ください。NHKアーカイブス「祖国ポーランドを取り続けた男」です。 http://www.veoh.com/watch/v142220982ZDCaCx2/ http://moviecache…
『ハムレット』と『罪と罰』、その深層心理、悲劇論か神話論か? アリアドネ・アーカイブスより2014-11-14 17:56:41テーマ:文学と思想 シェイクスピアの四大悲劇は何れもやりきれないほどに暗い。その無惨さは『リア王』において、哀切さは『オセロ』におい…
ベートーヴェン『第九』第四楽章――福岡大学市民カレッジを聴講する2014-11-14 10:48:01テーマ:音楽と歌劇 年末にベートーヴェンの第九交響曲を聴く、というのはいつしか日本人の伝統となってしまった。日本の国民意識のスノビズムを突くよりも、ここは素直…
小坂井澄著『お告げのマリア』2014-11-02 11:10:45テーマ:宗教と哲学 http://img05.shop-pro.jp/PA01018/534/product/5743747.jpghttp://ts1.mm.bing.net/th?&id=HN.608000875055549082&w=300&h=300&c=0&pid=1.9&rs=0&p=0大野教会 長崎外目にて お告げのマ…
旅の空にみた死の巫女、死の女神の面影2018-03-11 13:07:47テーマ:文学と思想 森 有正(もり ありまさ、1911年11月30日 - 1976年10月18日)は、日本の哲学者、フランス文学者。須賀 敦子(すが あつこ、1929年1月19日(戸籍上は2月1日)[1] - 1998年3月20日…
映画、トルストイの『終着駅』2014-10-22 10:39:36テーマ:映画と演劇 http://usagi.be/coco/_image/79a736bec69610679fd0d6d43c2d9fec.jpg 悪妻、について、例えば次のような記述がWikipediaにおいて参照することができる。 いわゆる「世界三大悪妻」(世界…
田中優子の『江戸の想像力』――にほんおのこの理想2014-10-20 21:29:56テーマ:歴史と文学 http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/0073/9784480080073.jpg?_ex=200x200&s=2&r=1 松岡正剛言うところの”着物召します教授”殿の、田中優子の…
到来する言語、あるいは言語の到来性について――素晴らしい言語の冒険旅行――2014-10-02 15:21:10テーマ:宗教と哲学 ―― 凡そ表現しうるところのものは十全に表現しうる、語り得ぬものについては沈黙しなければならない。――ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイ…
終戦直後の小林秀雄――『私の人生観』1948年と近代絵画論1958年のその十年2014-09-26 21:26:28テーマ:文学と思想 小林秀雄に『私の人生観』と云う講演録が残されている。終戦後の余燼が未だ燻っていたころ、有名人・小林秀雄がどのようなスタート台に立って…
おなかいっぱい食べたい~子供の貧困~2014-09-25 23:34:58テーマ:社会と地域 数年前、給食費を払わない親たちの問題を取り上げたマスメディアがあった。給食費の支払いを平然と踏み倒す親たちの存在に、一億総中流と呼ばれた時代とは隔世の感があると感じ…
堀辰夫の『死のかげの谷』と云う経験・22014-09-24 12:40:09テーマ:文学と思想 たとい、死の陰の谷を歩こうとも、私はわざわいを恐れません。あなたが私とともにおられますから。あなたのむちとあなたの杖、それが私の慰めです。(詩篇23) 死の影の谷、死…
堀辰雄の『死のかげの谷』と云う経験2014-09-22 11:14:36テーマ:文学と思想 死のかげの谷、一般には『風立ちぬ』の最終章とされている一章は特異な音質を秘めている。それは一人の作家の、生涯の分岐を成す作品の、その最後を示す到達点と云ういい方が、相…
水俣と三井三池、その労務管理の起源、その精神病理学的アプローチについて2014-09-18 10:29:35テーマ:歴史と文学 ――わたしは社会思想史の専門家ではないので割引して聴いてもらいたいのですが、わたしが石牟礼さんの『苦海浄土』をこの歳になって初めて読…
鎌田慧『去るも地獄残るも地獄』を読む2014-09-17 09:03:18テーマ:文学と思想 さあhttp://ecx.images-amazon.com/images/I/61hkO5cXpiL._SL500_SY344_BO1,204,203,200_.jpg あああああああ 鎌田慧の『去るも地獄残るも地獄』は1960年の三井三池闘争の終了か…
『苦海浄土』を読む2014-09-16 11:41:39テーマ:文学と思想 http://ecx.images-amazon.com/images/I/519CVVWX3JL._SL160_.jpg トーマス・マンの『魔の山』の思い出の時代を生きていたころ、郷里では石牟礼道子の同書が鋭意書き継がれつつあった。至近距離に…
『魔の山』の思い出2014-09-12 19:15:38テーマ:文学と思想 書棚から埃を払いながら取り出した本は高橋義孝訳の新潮文庫、昭和四十四年三月二十日発行とある。この年に読んだはずで、――そのことはあとで述べるような特別な思い出と結びついているのだが――読…
コンテナハウスに暮らすこどもたち2014-09-08 20:21:25テーマ:社会と地域 先回は46回にまで至った寅さんシリーズの苦渋について語ったのだが、その中で悲痛であったのは、面接試験で落ち続ける寅次郎の甥の満男が、もう、これ以上面接で嘘を言い続けるのは…
寅さんシリーズの第四十六作2014-09-08 08:58:23テーマ:映画と演劇 寅さんシリーズも46作目に来て随分遠くまできたものだなと云う思いを持つたのはわたしだけだろうか。寅さんシリーズに対して批判的な一人でありながら、43作、そして本作の苦さはどうだろ…
自然がわたしに語ったこと2014-09-02 18:17:16テーマ:文学と思想 デボラ・カーが主演した『黒水仙』と云う映画があるのですが、ヒマラヤ山奥で布教に勤しむ修道女たちの話、事情は明かにされないけれども、一度生涯に屈折を経験した若い尼僧が、ヒマラヤの…
旧約の神について思うこと2014-08-27 18:48:42テーマ:宗教と哲学 聖書を本格的に研究されている方からみれば幼稚な疑問と思われるかもしれませんが、旧約の神はなにゆえ怒りと殺戮と妬みの神として描かれたのかと云う、異教徒ならば当然持つ疑問ですね。こ…
何かが起こりつつある!――日本の家族で!2014-08-18 12:19:22テーマ:精神病理と現象学 先日武田百合子氏の『富士日記』について触れた折に、秘められた動機としての、世界創造者なり家庭再建の意志の如きものを切実な悲願として認めたのであった。他方、泰…
『富士日記』と『冨士』2014-08-16 11:51:30テーマ:文学と思想 山中湖にて 2014年夏 武田泰淳の名を、第一次戦後派をリードした著名な大家の名を今日インターネットで探しても、夫人の『富士日記』などの武田百合子さんの方が先に出てくると云う印象は、こ…
デブラ・ウィンガーの『永久の愛に生きて』2014-07-28 10:21:39テーマ:映画と演劇 http://ts1.mm.bing.net/th?&id=HN.608045366496923232&w=300&h=300&c=0&pid=1.9&rs=0&p=0 こんな映画を臆面もなく作れるとはさすが、アングロサクソン系の感性には特別のも…
デブラ・ウィンガーの『愛と青春の旅立ち』2014-07-27 09:55:29テーマ:映画と演劇 http://ts1.mm.bing.net/th?&id=HN.608044838213452122&w=300&h=300&c=0&pid=1.9&rs=0&p=0 愛と青春の旅立ちと云う映画、もちろん、わたしも最初はアメリカの余りにもアメリ…
博物館にて2014-07-26 13:23:27テーマ:わたしの住んでいる町 先日ゲーテの『若きヴェルテルの悩み』を読んできがついたのは愛の崇高な物語であるよりは卑俗で手前がってな若者の物語であったということだった。得られた作品はゲーテが主観的に望んでいたよ…
『失われた時を求めて』と『ユリシーズ』2014-07-23 18:55:35テーマ:文学と思想 例えば『失われた時を求めて』とは次のような物語である。 幼いころフランスの片田舎コンブレを訪れた際に決まって夜の一定の時間に招かれて来ていた謎の人物シャルル・スワン…